修了生からのメッセージ
- ◆ プロフィール
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- 2014年3月 大阪市立大学(現大阪公立大学)法学部卒業
- 2016年3月 大阪大学大学院高等司法研究科(既修者コース)修了
- 2017年9月 司法試験合格/同年9月 日系メーカー企業(東証プライム市場上場)法務部入社
- 2019年12月 司法修習(第73期)
- 2021年1月 ITベンチャー企業法務部入社
- その他、法律事務所でのインターンシップや友人の会社の業務委託、都内大学の研究センターでのプロボノ活動等も実施した経験があります。
- ◆ 今の仕事のやりがい、どんな仕事をされているのか教えてください。
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現在、私はIT企業の法務部に勤めております。
私の所属している法務部では、大きく事業法務・コーポレート法務・知的財産法務の3つのチームに分かれて業務を行っています。私は現職では、すべてのチームを担当してきました。
事業法務では、事業を推進するための法務に取り組んでいます。例えば、契約書作成や交渉業務、またサービスの利用規約やプライバシーポリシー作成、新サービスのローンチの際の法令調査等を行っています。関係する法令は、民法、個人情報保護法、消費者契約法、著作権法など様々な法令に触れることができます。
コーポレート法務では、主には取締役や株主総会対応(会議体の運営・議事録作成など)、内部通報制度の整備運用やリスク管理(インシデントの収集や解決のオペレーションの運用や構築など)、コンプライアンスの情報発信・社内研修などを実施しています。また、各種部門と連携の上、内部統制やガバナンスの業務も行っています。関係する法令は、会社法、金融商品取引法、コーポレートガバナンスコードのようなソフトローなどです。
知財法務では、技術やビジネスモデルを保護するために特許出願や管理、また、起業のブランドを保護するために商標の出願や管理を行っています。出願や管理だけが業務ではなく、保護するべき技術やブランドを事業部門やエンジニア部門と定期的に打合せをする等、会社にとって大切な種を探索するような業務もあります。関係する法令は、特許法、商標法、意匠法などです。
- ◆ インハウスロイヤーという仕事を選んだ理由について教えてください。
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私が、インハウスロイヤーを選んだ理由は、ビジネスを通じて、事業の当事者の一員として、社会のより多くの人を幸せにしたいと考えたからです。
世の中には様々な企業がありますが、企業は利益を追求するだけではなく、チームで社会の何らかの課題を解決し続ける場所であり、より多くの人に喜んでもらいたい、より良い社会にしていきたいとの想いで運営されています。
企業法務に強い法律事務所に相談させていただいたとしても、最後、自分たちのビジネスを前に進めていくかどうかは企業自身で決定されます。
私は、事業を行っていく当事者の一員として決断し、事業を通じてより多くの人を幸せにしていきたいと思っています。
- ◆ 司法試験合格後、司法修習に行かず民間企業に就職した理由をお聞かせください。
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私は、司法試験合格後、司法修習にはいかずに日系メーカー企業で勤めていました。
上に書いた想いと同じですが、チームでより社会に大きなインパクトを与え、多くの人を幸せにしたいと思ったからです。正直、「東京の大企業で、一度働いてみたい!こんなチャンスはないかもしれないから飛び込んでしまえ!」という想いもありました(笑)
同じ年に合格した仲間のほとんどが司法修習に行く中で不安もありました。
しかし、今後、事務所弁護士ではなく、インハウスロイヤーで生きていくキャリアの選択肢があると考えたときに、法曹資格を持たない新卒として、様々な職種の人と一緒に働く経験をすることで、自分のキャリアの幅が広がってくれると信じて、チャレンジすることにしました。仮に、事務所弁護士になるとしても、企業というクライアントの内部を知っておくのは、自分の武器になるとも考えていました。
- ◆ 一般企業勤務後に司法修習に行かれたのはなぜでしょうか。
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司法修習に行った理由は、企業内法務の担当者としてこれから生きていく選択をしたときに、法曹資格を有していることでキャリアの選択肢に広がりを持てると感じたからです。
また、社内でトラブル対応を行っている際に、法律家として司法修習で学ぶ事実認定や訴訟手続などの理解は非常に重要だと感じました。
法曹資格がないと企業内法務ができない訳ではありません。
今後、法曹の活躍の場が広がる中で、社外関係者との対話や交渉にあたり、法曹資格を持っているからこそ信頼を得られることもあると思っています。
- ◆ LSでの交友関係において今もつながりはありますか?
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ロースクール時代に出会った同期や先輩、教授や実務家の先生と、今でも交流があります。
一緒にジュリスト等の法律雑誌や興味のある領域の法律書を読んで議論していたこともあります。
苦しい司法試験を一緒に乗り越えていた仲間だからこそ、仕事で迷ったときや苦しいときに、相談に乗ってもらうこともできます。また、自分の専門外の案件の場合には専門の先輩や同期に任せることもできます。
法律問題が高度化し、多様になっている中、信頼できる専門家同士のつながりの重要性は増していると思いますので、ぜひつながりは大切にしてほしいと思います。
- ◆ 吉田さんが考える阪大ロースクールのメリットとはなんでしょうか。
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メリットは大きく3つあると思っています。
一つ目は、司法試験科目だけでなく、その他の科目を深く学問的に突き詰めて考えることができることです。
もちろんゴールは司法試験に合格することです。
しかし、(1)リサーチ力、(2)基本書、論文、判例評釈を読み解く力、(3)法的な文書を書く力の基礎力を身につけられるのは、ロースクールでしかできません。
この3つの力は、法律家として生きていく上で必要不可欠です。
二つ目は、ロースクールにいるからこそ学べる実務科目です。
自分のキャリアを考えていく上で、実務家との交流をすることができる授業や機会は非常に大切です。弁護士だけでなく、検察官や裁判官の授業もたくさんあります。
実務家が大切にしていることや悩んでいること、実務で問題になっているポイントなど、法曹関係者が日々感じている生の声を聴くことができます。
これは、自分の今後のキャリアを考えていくにあたっては、とても大切なことだと思っています。
三つ目は、信頼できる同期、先輩や後輩、そして教授や実務家の先生たちとのつながりをもてることです。こちらは先ほど申し上げた通りです。
- ◆ ご自身の将来像について、今後のキャリアや挑戦したいことなどがあればお聞かせください。
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企業の法務部門は、「何でもかんでもNGと言ってくる」というよくないイメージもまだまだあります。私は、「だったら、こうしてみたら?」という大好きな言葉を大切にして、事業の背中を押せるような法務パーソンとして活躍していきたいと思っています。
また、法律は、あくまで自分の武器であり、法律だけで生きていきたいとは思っていません。強みは活かしつつ、他の武器が必要になればどんどんチャレンジしていきたいと思います。
これからも好奇心を持って新しいチャレンジをしつつ、事業に寄り添い、事業推進できるように自分のスキルを磨いていきたいです。
- ◆ LSでの学びが今の仕事に活かされているか、後輩へのメッセージをお願いします。
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ロースクルール時代の学びは間違いなく、今に活かされています。
先ほども申し上げましたが、(1)リサーチ力、(2)基本書、論文、判例評釈を読み解く力、(3)法的な文書を書く力の基礎力はロースクルールの授業を通じて、基礎力が付いたと思っています。
司法試験の受験勉強とロースクールの授業はあまり関係がないと思わず、しっかりと授業に取り組むことが大切だと思います。
ただ、ロースクールを卒業して終わりではありませんし、司法試験に合格して終わりではありません。
そこからが始まりです。
司法試験やロースクールの勉強が生活の大半にはなってしまうと思いますが、くれぐれも心身の健康を維持しつつ、ぜひ「どんな法曹になりたいのか。」「法曹になって何をやりたいのか。」について、しっかり考えてほしいと思います。
ぜひ、わくわくする未来を、一緒に学んでいる仲間やお世話になる先生方ともお話してみて下さい。
受験勉強でつらいときにも、わくわくする未来を想像して、自分の課題と素直に向き合い努力すれば、どんな壁でも乗り越えられると思います。