0.自己紹介
法科大学院修了年度:令和3年 既修
受験回数:1回
選択科目:租税法
1.はじめに
このタイトルに食いついて読んでしまった皆さん、今すぐ“悔い改めて”ください。というのは半分冗談ですが、司法試験の勉強に「コスパ」や「近道」なるものはなく、地道にやってかなければならないというのが持論です。もっとも、予備校等を利用せずに司法試験に1回で合格したというのは事実なのでこれを読んでいる皆さんに少しでも役に立つ情報をお届けできればと思います(長文なので必要箇所だけ読んでいただいても良いです)。
2.法科大学院受験について
私が法科大学院進学を決意したのは大学3年生の時でした。私の大学は法と名前が付いているものの、一般的な法学部に比べて法律科目が少なく、自学自習のみで頑張った科目もありました。主に、リーガルクエストなどの基本書をノートにまとめたり、判例百選の通読をしたりしていました。特に判例百選は問題の題材にされることも多いので事件の概要と判決を中心に読んでおくとよいと思います(司法試験の勉強もでもそうですが)。
3.法科大学院時代での勉強について(+選択科目について)
まず、私は時間に縛られるのが嫌いで、何時から何時まで何時間勉強すると決めて勉強するのが嫌でした。なので1日何時間勉強していたか聞かれてもちゃんと答えられませんが、授業を除けば大体3~4時間、試験直前は6~8時間ほど勉強していたと思います。普段は司法試験の勉強というよりは授業の予復習に負われていたのでそちらを中心にやっていました。期末試験対策は、まず授業レジュメをノートなどにまとめてそれを何回も読んで覚える、過去問を3年以上解き(簡単な答案構成などが主でした)、講評を読むといった感じでした。
選択科目についてですが、私は租税法を選択しました。きっかけは木山先生の「小説で読む租税法」を呼んで面白いなと思ったからです。興味がある方は是非一度読んでみてください(回し者ではありません)。3年生から税法を始めたのですが、租税法は1年で合格レベルに到達できたので、とてもコスパのよい科目だと思います。確かに、税法の条文や税制はとっつきにくく難しいと感じる人も多いと思います。しかし、それを理解すればそれ以上に難しい問題が出てくることはなく、また、覚える範囲もとても少ないので、暗記が苦手な人には特におすすめです。あと、例えば就活などで税法が得意ということができるので他の就活生と差を付けられるところもおすすめポイントです。興味がある人は是非税法1だけでもいいので受講してみて下さい。
4.司法試験対策について
ほぼここからが本題なのですが、司法試験の勉強を本格化させたのは3年の夏休みからだと思います。司法試験の勉強で最も大事なことは毎日法律に触れることだと思います(私が読んだ合格体験記では、熱が出ても最低短答を10題解いていた方もいました)。法律に毎日触れていないと感覚が鈍ってしまうので、最低基本書を1章分読むというだけでも良いので毎日継続的に勉強をすることが大事だと思います。
直前期に入るまでは友人とゼミを組んで問題集や過去問を解くことを中心に勉強していました。個人的にはゼミを組むことはとても有用だと思います。まず、他の人と問題集等に取り組むのでダレることなく問題をこなすことができます。また、自分ではわからないところは友人と話し合うなどして解決でき理解も深まります。また、私はあまり情報通ではなかったので友人から得られる司法試験や予備校の情報はとても助かりました(ここで情報を得られれば予備校に行かなくても良くなります(笑))。なのでゼミを組んで勉強することをお勧めします。
司法試験対策の内容ですが、①まとめノート、②過去問、③判例(百選)の確認、④論証の暗記、⑤短答対策をやっていました。まず、①についてですが、これは人それぞれまとめ方があると思いますが、知識を自分なりに体系化することで理解が深まるので作ることをお勧めします。ちなみに私は学部生時代に基本書の情報をまとめたものと、過去問で出た論点の論証をまとめたノートを作りました。特に司法試験では後者を使いましたが、論証集を全部まとめるのはすごく大変だと感じたので(面倒くさがり屋なので)、せめて過去問や問題集等に出てくる分野に絞ってまとめようと思いました。②について、世間では3~5年分解けば十分などと言われていますが(個人調べ)、ゼミでは旧司法試験、予備試験、新司法試験全部を解きました。正直めちゃくちゃ大変でしたがおかげで本番では焦ることなく問題を解くことができたので気力があれば是非挑戦してみてください。ちなみに、論文を書く際に意識したことは「“以上“を書き切る」です(他の合格体験記の受け売りですが)。論文試験は何か書かないと点数になりません。確かに模範解答通りに書けば点数がもらえますが、それが唯一の回答ではないので、その通りに書かなくてもある程度理論立てて書いてあれば点数になります。なので、普段から自分なりの答案をひねり出して書く練習をすれば本番でも役立つと思います。答案を書くのが難しいという人はとりあえず模範解答を写経するだけでも答案の書き方をつかむことができるのでとにかく書くことをお勧めします(個人的には答案をパソコンで答案を作成すると手書きよりも早くでき、まとめノートをパソコンで作成している場合はそこにすぐ編集できるのでお勧めです)。過去問は無料で見れる良教材なので“コスパ”が良いです。③について、2でも書きましたが司法試験では「設問が何の判例に近い事案か」を考える事が高得点に繋がります。また、単に判旨を暗記するだけでなく、判例の射程も含めて押さえるとより効果的です(特に憲法)。④について、市販の論証集をまとめノートに自分なりにまとめて、それを暗記しました。直前期はそのノートを毎日読んで回すという勉強をしていました。これは直前期に集中してやれば十分だと思うので(というか毎日論証集見ると飽きるので)とりあえず、直前期前までは論証集をしっかりまとめることに注力した方がよいと思います。⑤について、過去問を2周くらい回すことと、六法を通読するといった勉強をしていました。もっとも、後述の通り短答は悲惨だったので他の合格者の勉強を参考にした方がよいと思います(笑)。
あと、休憩についても書いていきたいと思います。あまり参考にしてはいけないかもしれませんが、私のモットーは「やりたくないことはしない」なので、いかに司法試験の勉強が嫌にならないかという点は重点を置いていました(勉強をやりたくなくなってしまうため)。上記ではいかにもといった感じで書いていますが、正直、直前期に憂鬱になってほとんど勉強をしていない時期もありましたが、嫌な気持ちで10時間やるよりも集中できる状態で1時間やる方が身につくと考えているので、皆さんもあまり勉強時間に縛られず、楽しんで勉強に臨んでください(試験勉強は楽しくないと思いますが(笑))。
ちなみに、私は予備校の答練や模試を受けていませんが、特に本番で困ったことはありませんでした。個人的には上記の勉強で十分対応できるのではと思うので、受けようか悩んでいる人は受けなくても良いと思います(予備校等は通っている人も少なくありませんし、謳い文句は不安を煽ってくるので怖くなってしまいますが、自分に合わなければいかなくていいと思います)。
5.司法試験当日について
まず、私は東京で受験したのですが、ホテル選びから困ると思います。私は本番1ヶ月前に予約しましたが意外と直前でも間に合うのでそこまで焦る必要はないと思います(直前まで空いていることを保証するものではありません)。ちなみに三井ガーデンホテル五反田に宿泊しました。個人的には高いホテルでしたが(ホテルの高さ的にも値段的にも)、快適な部屋で、かつ露天風呂もあるのでとても快適に過ごせました。ホテルに泊まるという方は多少高くなっても、長い期間泊まることを考慮して自分が快適に過ごせるホテルを選んだ方が良いと思います。
試験前日及び当日は「落ちる前触れなのでは?」と疑うくらい意外とぐっすり眠れました。なぜだろうと考えましたが、おそらくいい意味で諦めていたことと、自分に自信があったことが要因なのではないかと考えています。当時は、「落ちても別の仕事に就けばいい(2回目受験するつもりはありませんでした。)」と思っていたこと、「過去問もいっぱい解いたし、論証も飽きるまでやったから大丈夫だろう」とある程度の自信を持って臨んでいました。
試験本番では上記の通り、過去問で見た問題が多く、あまり焦らず解くことができました(民事訴訟法に至っては20分くらい時間を余らせて終わることができました)。一方、短答は思った以上に苦戦しました(答えが同じになると「本当にあっているのか」と心配になり良いパフォーマンスができなかったのが原因だと思います))。ちなみに、私は試験が始まる前に、印を結ぶ(「臨兵闘者…)→試験が始める3分前は目を瞑る→始まってもすぐに始めず他の人が問題を開いたら自分も始めるといったルーティーンをしていました。皆さんも試験前のルーティーンやお守りがあると本番緊張せずに臨めるかもしれません。
6.合格発表までと就活について
6月になると短答の結果が返ってきます。私の成績は、とりあえず合格していたものの、なんと「104点(3060人中2189位)」。正直不合格を覚悟しましたが論文には自信があったのでそこまで落ち込みませんでした。とはいうものの、他の阪大生は120点以上を取っていたと聞いていたので結構憂鬱になっていました。もっとも、司法試験受験後にバイトをしていたこともあり、いい感じに気分を紛らわせられました。皆さんも、司法試験後は何か法律以外に気を紛らわせられるものをすると良いかもしれません。
また、就活について、早い人だと在学中にやっている人もいますが、司法試験合格後にやる人が大半なのでそこまで焦る必要はないかと思います。もっとも、司法試験後に就活する人はあまり多くないのでこの時期に始めるとよいと思います。私も短答の点数が良くなかったこともあり、本格的にはやりませんでしたが、事務所説明会やサマークラークには参加していました。最低このくらいは参加しておくと合格発表後の就活も有利に進められるかもしれません。あと、面接では「学生時代に力を入れたことは?」「司法試験以外に頑張ったことは?」といったことを聞かれます(ほぼ伝聞ですが)。司法試験の勉強のみに集中するのは“コスパ”がいいのかもしれませんが、こういった質問が来ると結構厳しいのではないでしょうか。別に就活対策でというわけではないですが、在学中から色々な経験をするのが重要だと思います。
7.最後に
ここまで読んでいただきありがとうございました。このような駄文でも皆さんのお役に立てたなら幸いです。つらつらと書いてしまいましたが、要は基本書・判例を読む、過去問を解く、論証を覚えるを徹底すれば例えば予備校に行ったり何か特別な勉強をしなくても合格は可能であると思います。ちなみに、“コスパ“を強調したのは、学生委員をやっていた時に学部生やロー生の質問に答えるという機会を設けた際、「この科目は司法試験に役立ちますか」「司法試験に役立つ勉強を教えてください」といった質問を見かけ、気になっていたからです。確かに司法試験に合格するためにそれに直接関係ないものを捨てるというこことは限られた時間を有効活用するという意味で大事ですが、法科大学院の授業に(限ったことではないですが)無駄なものなどなく、何等かの形で役立つはずです(仮に司法試験には役に立たなくても、法曹になったとき等にも役立つと思います)。とにかく言いたいのは「”コスパ馬鹿”になるな」ということです。法科大学院での貴重な時間でいろんな勉強(と称してもよいですが)をしてみてください。きっとその経験が司法試験やその後の人生にも繋がると思います。
勉強方法は千差万別です。自分の成績が伸びる勉強方法が何かを常に考えながら勉強していくことが何より重要です。そのことを踏まえてあくまでも一例として私の勉強方法を紹介したいと思います。
私はロースクールの授業では予習にとにかく力を入れていました(復習をしなくても良いという趣旨ではありません)。科目によっては予習に10時間ほどかかることもありましたが、レジュメや教科書を徹底的に読み込んで授業に臨み、授業自体を一つの復習の場と考えていました。それでもわからない部分については授業後にすぐさま質問に行ったりオフィスアワーを利用したりして解決するようにしていました。復習主体の勉強だと先生の噛み砕いた説明を聞いた上で理解に辿り着くというプロセスをたどり、「自分の頭で考える」ということをしにくくなると考えたからです。短期的な効率のみを重視するのであれば、復習メインの方が短時間でレジュメの内容を押さえることができます。しかし、その分自分の頭で考えるという習慣が抜け落ちてしまいやすいように思います。実務に出れば答えのない問いに自分なりの解答を出せるようにならなければなりません。何を調べれば、あるいはどのように考えれば解答を出せるようになるのかという力を養う訓練の一種として予習にしっかり臨むことは重要だと思います。予習を行う際に私が気を付けていたことは解答までのプロセスをしっかりと言語化しておくことです。ただ単に解答を調べるのではなく、なぜそのような解答になるのかを自分の言葉で説明できるようになれば、細かい知識が抜けたとしても一定の解答に辿り着くことができるはずです。
私はロースクールの既修試験に落ちて未修で入学しましたが、1年目に徹底的に「自分の頭で考える」ということを意識して勉強することを通じて、未修1年目が終わった頃には司法試験に合格する土台ができたと思っています。法律の知識は勉強量を通じて確保することはできますが、考える力は量をこなすだけでは身につきません。せっかくロースクールで2年ないし3年勉強するのであれば、目先の知識の習得にとらわれず是非とも腰を据えて考え抜く力を養って欲しいと思います。
冒頭で述べた通り勉強方法は十人十色です。純粋未修の人もいれば、予備校で既にある程度の学習をして既修で入学する人もおり、ロースクール入学時点で司法試験合格のために必要な勉強の量・やり方は変わってくると思います。ここで記載した勉強方法もあくまでも一例ですので各々にあった学習スタイルを確立していけば良いと思います。
1.はじめに
私は、2020年に関西大学を卒業後、同年に大阪大学大学院高等司法研究科に進学しました。2022年に同大学院を修了するとともに、同年の司法試験に合格致しました。司法試験に合格するまで、先生方、学校関係者の方、先輩方、同期の友人、後輩の皆さん、家族に支えて頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
僭越ながら、本稿においては、大学時代から合格に至るまでの過程を記載します。これから司法試験を受験される皆様にとって、何か参考になるものがあれば幸いです。ただ、後述するように、私の合格については運の要素が人よりも強いと思われます。
2.大学時代
大学時代は何の計画性もなく、「今しかできない」を掲げて勉強以外の多くの活動を行っておりました。体育会・サークルに所属してほぼ毎日活動し、休日も様々なアルバイトをして、特に勉強せず日々を楽しく過ごしていました。
法曹を目指すなら、いよいよ勉強しなければと勉強を始めたのは大学3年生の頃です。民法のみの字も知らず、「物権」と「債権」の違いを知って嬉しくなり、先輩に誇らしげに話しては、「1年で習うようなことを自慢げに話している」とからかわれていた頃です。
私が始めた勉強は、単純かつ愚かなものでした。「司法試験を理解すれば合格できる」と思い、いきなり司法試験の短答・論文の問題と解説を購入して読み始めました。さらに、長期休みを利用して地方の住みこみアルバイトを入れ、1か月間、アルバイトと司法試験の問題解説を読むことしかできない環境にしました。行動力だけが高い所業でした。
案の定、1か月の成果は、「法律って難しいなぁ」と浅い感想を得て終わりました。
司法試験を合格して振り返った今、この上ない無駄な時間を過ごしていたなと思います。膨大な基礎知識があるからこそ理解できる法律の文章を、何も知らずに勢いで読んでいるからです。参考書の初めの辺りを読んでいて眠くなっても、まずは諾成契約や要物契約といった初歩の初歩からコツコツ勉強すべきでした。その契約の類型を知っているからこそ、後に勉強することとなる要件事実などの理解も深まります。文章として記されている言葉だけでなく、書かれていない前提知識を踏まえて理解し、勉強しているからこそ、張りぼてにならない太刀打ちできる知識の蓄積になると今は思います。
さて、1か月の自主勉強合宿を終え、流石に当時の私もいきなり司法試験に挑むのは意味がないと気付き、判例を読んだり、演習本を活用したり、先生方や先輩、同期に質問しておりました。しかし、この段階では、ロー入試に間に合わせるためにと「知識の丸覚え」をしてしまっており、あまり理論や理屈を考えずに勉強しておりました。
結果、法科大学院の入試では、大阪大学法科大学院に補欠合格で入学するなど、大学院生としてのスタートはあまり良くありませんでした。ただ、最下位からのスタートなので、伸びしろしかなく、上がるしかないなという前向きさがありました。
3.大学院時代
大学院1年目は、よく入学できたねと友人に笑われてしまうほどに、法律の理解が甘かったです。例えば、刑事裁判で証人が証言台で発言しても、その後に供述不能にならなければ、どんな場合でも証拠として認められないと本気で思っておりました。丸覚え勉強だったので、全く趣旨を理解できていなかったのです。
色んな分野で、参考書を読み返し、理解できなかったことは先生のもとに質問に行きました。その度に、そういう意味だったのか、と沢山のことを理解でき、とても楽しかったです。根気強く説明してくださった先生方にはとてもお世話になりました。
阪大ローでは、授業課題について優秀答案を公開している授業がいくつかあったので、‘学ぶ’の語源である‘真似る’をしようと、優秀答案の分析を行っていました。そこで、問題提起、規範、あてはめが忠実にされていることに気付きます。理路整然と表現する三段論法の重要性を学びました。これまでは、どんな形であれ、いわゆる論点を書けておけば理解を示せるんだろうと甘く考えておりました。後に、先生方が「答案は問題提起で決まる、問題提起で理解しているかが分かる」と仰った際には目から鱗が落ちました。そこから、判例や答案を読む際には、問題提起、規範、あてはめを色分けして読み、「分かる」ために「分けて」考えていきました。我ながら、よく入学できたなと自分が強運に思います。
徐々に知識も書き方も定着してきたかと思っていた大学院2年目、刑事系科目の中間テストで最下位を取ります。模試では、憲法でほぼ最下位を取ります。もとが丸覚えだったので、勘違いして覚えていたり、間違えて理解してそのまま進んできたことが多かったのです。
色々とおぼつかない私でしたが、丸覚えをやめて基礎から地道に理解し直したり、優秀答案を真似たり、適切な時期に過去問を回し始めたり、勉強量が多すぎて理解が難しくて家で泣きながら勉強したりするなどした結果、最下位からのスタートでしたが、特待生になって卒業することが出来ました。
4.試験直前期
最下位を取った悔しさは、「二度とその問題においては失敗しないぞ」という気概を私に与えてくれました。阪大ロー入試の刑法と刑事系科目の中間テストは特別なもので、自分としては勉強したはずなのに全く書けなかったという悔しさが特にありました。そのため、通常の勉強に加え、司法試験で出題されたら完璧に書いてやると思い、少し力を入れて勉強しておりました。そのまさかでした。
5.試験当日
精神的に追い詰められる中、先生方や友人に掛けてもらった言葉を思い出しながら、なんとか1日目、2日目をこなしました。
迎えた論文式試験の刑事系。1日目2日目同様、分かる問題が出てくれ、と祈りながら問題を開くと、そこには私が最下位をとった問題分野が2つとも試験に出題されていました。運が味方になってくれたとしか思えません。山が的中した際の注意は、書きすぎるが故の時間切れであることを思い出し、何を書き、何を書かないか冷静に判断して書ききりました。試験後、試験の邪魔になると抑えていた全ての感情を吐き出しました。一番果たしたい形でリベンジを果たせたことが、とても嬉しかったです。
6.おわりに
私は随分と遠回りの勉強をしておりました。初めから基礎からコツコツと勉強すればよかったものの、知識量の少なさに焦り、何とかロー入試に間に合わせるように丸覚えをしました。その後、太刀打ちできない現実を知り、司法試験で戦えるよう一から理解し直しました。自分の理解力や到達レベル、自分が継続できる集中時間や性格、特質にあった勉強法を自分で見つける努力を大学院に入るまで怠っておりました。
これらの反省が、これから受験する皆さまに少しでも参考になれば幸いです。と同時に、私のような、大学院入学時にほぼ何も分かっていない者が、合格していることに少しでも希望を抱いていただけたのであれば幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。合格に辿り着くことができましたのは、本当に素晴らしい方々に出会い、支えて頂いたからだと実感します。学業だけでなく、精神的にも支えて頂いたすべての方々に心から感謝申し上げます。
今後は、社会に少しでも貢献することができる法曹になるべく、自己研鑽に励み、より精進していく所存でございます。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
0.自己紹介
法科大学院修了年:令和4年(平成2年度入学、既修)
受験回数:1回
選択科目:労働法
1.最もお伝えしたいこと
私は司法試験受験生時代、「過去問が大事だぞ」とか、「採点実感や出題趣旨を読み込めよ」という言葉を聞くたびに、「では過去問だけを解いていればいいのか」とか、「そもそも“読み込む”という日本語はいったい何を意味しているのかよく分からない」と感じておりました(というか、「読み込め」と作業を命令するのではなくて、あなたが読み込んだ結果得たところのコンテンツを端的に教えてくれればいいのに、と思っておりました。)。もちろん、過去問を解くこと、そして採点実感や出題趣旨を読むことは重要なのですが、それは司法試験合格に向けた受験勉強の中でどういう位置づけなのか、どういう意味を持つのか、ということを理解することが重要であると個人的には思っております。というのも、その意味に気付いた時に、司法試験が全体として問うている能力などについて自分なりに理解し、それにこたえようとするトレーニングができるからです。個人的な経験ではありますが、問われていることが分かって以来、司法試験合格に向けた能力が急激に成長したように思います。そのように、司法試験を手のひらのなかに収めることができるような感覚を持てば、試験当日も一定の自信をもって問題を解くことが出来ると思います。
そこで、以下では私なりに感じた司法試験が問うている能力について、主に論文式試験を対象に整理したいと思います。もちろん、以下は私の独断と偏見によるものですから、誤っている点もあると思いますし、人によって整理の仕方は異なると思います。ただ、私がこの体験記において最もお伝えしたいことは、司法試験の各科目の細かい論点を超えて、司法試験全体が何を問うているのかということを自分なりにつかみ、整理することが非常に重要である、ということです。「読み込め」というアドバイスも、自分なりに感覚をつかむことが必要であり、知識として内容を伝えてもあまり意味はないからだろうと今になって推察しています。感覚をつかむにはどうしても自分から一次情報に触れるしかないところがあります。したがって、以下にお示しする全体像自体にあまり意味は有りません。あくまで皆さんが自分なりに全体像をつかんでいただくこと、ご自身なりの感覚を持っていただくことが重要であり、ぜひそれを意識した勉強をしてくださいというのが私の最もお伝えしたい点です。以下でお伝えする全体像は、そのための参考にすぎません。
2.司法試験合格に向けて必要と思われる能力
司法試験合格に向けて必要だと私なりに感じた能力について、全体像を以下に図示します。
注意点は、ここで求められている能力は合格者たちが基本的に出来ていたという相対的な水準で必要という意味であり、絶対的な能力ではないということです。過去問を解くたびにその出題趣旨等を読むことが重要であるとされる理由の一つは、司法試験が全体として問うている能力のどの部分について、自分はまだ合格者の平均に到達していないのかが分かるから、だと思います。そして私個人としては、まさにこの点こそが核心的ではないかと考えています。また、漫然と問題を解いて、その「作業した感じ」で満足してはいけません。どの能力をトレーニングするために勉強するのかについて目的意識を持つことが出来れば、より効率的にその能力は向上します。
たとえば、自分は典型論点に気付く能力がまだ合格者の平均に到達していないので、ロースクールの授業ノートや市販されている趣旨や規範等を整理した本を読み返そうとか、あるいは分かりやすい日本語を書く力が弱いから、もっと人に答案を 見てもらおうとかといった具合です。インプットとアウトプットのバランスも、自分がどの能力が足りていないのかによって判断すればいいと思います。例えば、点数配分にしたがって時間や記述量を割り振る能力がまだ足りていないと考えるのであればアウトプットをすればよいですし、問題文を整理する能力をトレーニングしたいのであれば答案構成に留めるといったこともあり得ると思います。
また、上図は便宜上、各図形が独立していますが、経験的にはこれらの能力は相互に関連しており、いずれかが向上すれば他方も向上し、また、何れかができていないということはどれかも出来ていない可能性があると思います。自分にどの能力が足りており、あるいは足りていないかわからないという場合には、友人の答案等を見せてもらうことも有益ではないかと思います。そうすると、自分は案外基本論点を落としているんだなとか、法的三段論法で書く癖がまだ確立していないなといったことが分かると思います。
なお、以上は主に論文式試験に関する内容でしたが、論文式試験の勉強は短答式試験の勉強にも役立つと思います。典型論点をおさえる勉強は、短答式試験において落としてはいけない問題の論点であることが少なくないからです。
司法試験合格に向けて必要な上記の能力の水準に到達することは、決して不可能ではありません。確かに司法試験は科目数も多く、うんざりするようなことも多々あるのですが、それはみな同じです。過度に背負い込まず、肩の力を抜き、淡々としていればいいと思います。
しかし、ここまで読んでお気づきの方もいらっしゃるかと思うのですが、最初からこの全体像をもって勉強することは残念ながら難しいと思います。全体像に対する感覚は、とりあえず勉強を進める中で徐々に気付き、形成されていくものだからです。とはいえ、やはり全体像をつかみ、それに対応した勉強をすべきなのでしょう。このように、試行錯誤しながら相反する行為を両立させていかなければならない点に試験勉強の難しさがあるのではないかと思います。司法試験合格に向けた能力が私の中で急激に伸びたと冒頭に申し上げましたが、それは勉強を続けることで、全体像に対する解像度が上がったからではないかと考えております。そこで、日々の学習よりも少し高い視座で勉強方法について考える時間や、合格者等からアドバイスを取り入れる時間も重要になるかと思います。
3.さいごに
必死になって勉強し、よくわからない論点について友人と文句を言い合いながらも議論し、それでもなお分からなければ教授に質問させていただき…というサイクルは個人的には楽しく、充実した日々でした。ロースクールで得ることが出来た人との出会いは、まさにかけがえのないもので、一生の財産です。そのような素晴らしい環境を提供してくださった阪大ロースクールに、心から感謝したいと思います。
1.はじめに
私は既修3年次特別選抜を経てローに入学しました。学部3年間+ロー2年間の合計5年の勉強で、浪人もせず司法試験に受かるというのは、当時まだどちらかといえば「すごいこと」扱いでした。しかし、法曹コースの整備や在学受験制度の導入により、5年合格が普通になりつつあります。私は大した人間ではありませんが、短い年数で合格を勝ち取るために有意義なことを、せめて5年合格の先輩らしく書いてみようと思います。
2.得意に頼らず苦手を避けず
誰しも得意と苦手があり、それ自体は悪いことではありません。しかし、「この科目は得意だから得点源にしよう」「そしてこっちの苦手な科目で点が取れなくても補おう」と戦略を立てるのは危険です。
司法試験では毎年1科目くらい難化・傾向変化といった事象が起きます。そうなったら、問題作成者に呪いの念を送りつつ、書けることを並べるしかありません。得意科目でも思うように得点源とできない場合がありうるのです。そしてそれに頼り切っていると、終了後の精神状態にも極めて悪影響が及びます。本番、憲法終了後にむせび泣いていたわたしの後列の人は、翌日姿を見せませんでした。
得意は得意でいいですが、それに頼って苦手を補わないようにしましょう。
3.期末試験を大切に
修了後に2年生向けの期末試験対策会を担当しましたが、一部の後輩から「司法試験の勉強をしたいのにローの勉強に時間をとられて無駄に思える」との声がありました。
これは極めて重大な間違いです。阪大ローの期末試験は多くが司法試験に直結しており、定期的に、論点に気付けるか、規範を理解しているか、あてはめを適切に展開できるか、相対評価で実力を確認できます。B+以上を取れていればその科目は司法試験に向けて好調に進めているといえるでしょう。期末試験ごとに実力を少しずつ高めて挑み、結果に基づく調整もして、最終的には司法試験に対応できる実力が身についていきます。私自身、一度Cを取ってしまった科目では次の学期に必ずA以上を取ることで苦手を克服しました。
長期目標を達成するには、短期目標の達成の積み重ねが大切です。最終的に司法試験に合格するため、まずは期末試験でB+以上の良い結果を得ることから始めてみましょう。
4.過去問に勝る問題集はなし
いろんな問題集に手を付けるのは愚策です。時間は限られているので、中途半端に終わりきらずタイムオーバーになりかねません。やるならひとつかふたつにしぼりましょう。
では、どの問題集を選ぶべきか。当然、過去問です。何といっても無料な上に、解説(出題趣旨)と合格に必要な基準(採点実感)までついてくる。さらには本番の問題に内容・形式共に一番近い。過去出たことない論点が本番で出ることはまれで、もしあってもほぼ誰も得点できず大して差はつきません。改正があったばかりの民法以外は、過去問だけ7年程度やっておけば演習として十分です(商法は平成19年の問題が新株発行の論点を非常によく抑えることができるので、これもプラスで)。
注意点として、基本的には本番形式(時間を計る+手書き)でやりましょう。パソコン起案は早いですが、手書きに慣れていないと本番は対応できません。落ちます。また、参照物を見ながら時間無制限で解くのは、初めて過去問に取り組んでみるときだけにしましょう。
一度5日間作って、完全に本番通りのスケジュールで1年分の過去問を解くのが非常にいい経験になります。いかに本番が体力勝負か身をもって知っておきましょう。民訴を解き終えた後は手首が地獄のように痛みます。1日目の夜に湿布を張って寝ると少しマシです。
いきなり司法試験を解いてみるのが怖いなら、期末試験の過去問もいいと思います。特に行政救済法(旧行政法応用2)は出版社泣かせの良問揃いです。刑訴法については刑訴応用よりも刑事法律文書作成の方が形式的に本番に近いので、こちらがいいと思います。
5.フッ軽であれ、でも休息も大事
勉強を純粋に楽しめるステージにいる人は稀です。多くの人は、ロー生活のどこかで心を病んでしまいます。適度に勉強以外の事にも精を出しましょう。
時々就活に目を向けてみれば、早めに動くことで単純に良いことが多いし、いいごはんを食べられることがあります。英語などの勉強も武器になります。
アルバイトするときは、法律に関係ない仕事もやってみましょう。いろいろな人と会い、いろいろな労働環境を知る機会は貴重です。ただし勉強に支障がないように!生活のため夜勤の工場アルバイトをしていた時期、徹夜明けで仕事から1限に直行したら小テストで0点を取ってしまい、先生にものすごい目で見られた私からのお願いです。
シンプルに休息を取ることも重要です。恋人や友人と遊んだり、学年対抗で野球をやったり、推しを推したり、引きこもってゲームをしたり、何でもいいです。お酒はほどほどに。ある程度休息を取ると、不思議と「勉強したい」という気持ちが湧いてきます。
6.最後に
司法試験終了後、再現答案を作ろうとしたところ、頭がくらくらして何も思い出せませんでした。司法試験は心も体も容赦なく削っていく点で全ての人に平等であり、自分が劣っていると考える必要はありません。細かい勉強法は人それぞれ好みや個性に合わせて変わっていていいのだし、上述の事柄を頭に入れつつ、後は好きなようにやってみてください。
余談ですが、この後は2年生から全科目分送られてきた過去問答案をがんばって添削します。先輩というのは、礼儀さえ欠かなければいくらでも便利に使いましょう。何か悩むことがあったらいつでも連絡してください。