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研究科長室より

かかるところてん

2020/08/07

 いま、高等司法研究科では、2020年度春~夏学期の期末試験が行われています。他の学部・研究科では、オンライン試験となったため、試験期間でもキャンパス内に学生の姿はまばらです。しかし、高等司法研究科では、多くの科目で、通常の筆記試験を行っています。司法試験に向けて、限られた時間内に答案を書くことが重要だと考えたからです。

 学年暦では、727日から87日までが試験期間でした。この記事が掲載される頃には、期末試験は終わっているはずだったのですが、期末試験についても、with Corona の対応をしています。教室を分散して感染対策を講じながら、体調のすぐれない人や感染リスクを感じる人に対応するため、教室での試験に加えて、オンライン試験(追試験)を行うことになったのです。一年次開講科目の試験をお盆明けにずらし、追試験の機会を保障したりするため、8月下旬まで分散した形で期末試験が続きます。

 今学期は、オンライン授業が最後まで続きました。教員の側からすると、授業で伝えたことの成果が答案に現れているかどうか、例年以上に気になるところです。私の担当科目では教室での期末試験が終わったので、早速採点を始めたところです。今年は、授業での対話が失われた分、課題の添削に力を入れ、答案の書き方についても指導を強化してきたつもりでした。それなのに、例年と変わらず、「かかるところてん」答案が多いな、と感じています。

 「かかるところてん」とは、「かかる~」、「~であるところ」、「この点」という答案によく現れる癖をつなげたものです。まず「かかる」は、本来「斯くある」という連体詞で、現代文ではほとんど使いません。ところが答案では、「かかる行為は…」などと、しかも1通の答案の中で繰り返し使われています。文章のトーンが文語調であればともかく、「この行為」と書けばいいのに、と思うのです。次に「~であるところ」という文のつなぎ方です。この言葉は前の文が後ろの文の前提条件なのか、単なる前置きなのか、留保なのかが曖昧で、文章の論理性を損ねていると感じます。最後に「この点」です。前の段落で複数のことを指摘しているのに、段落を改めて、「この点」とか、「思うに」と書き始める例が目立ちます。このとき、「この」が何を指しているのか、何を「思って」いるのかが分からなくて、もう一度前の部分を読み返さなければならなくなるのです。

 なくて七癖、と言います。私の文章にも癖があることは自覚しています。「かかるところてん」が気になるのも、私の好みの問題かもしれません。しかし、論理的で読み手にとってわかりやすい文章を書く、という意識は、常に持っていたいものです。学生諸君は、今学期の答案が返却されたら、自分の文章を読み返してほしいと思います。

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