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研究科長室より

書初め

2021/01/05

 2021年が始まりました。2020年の一年は、コロナ禍のうちに過ぎ去ってしまいましたが、今年はそれを乗り越え、未来を展望できる年になることを願っています。

 さて、年の初めの楽しみの一つに年賀状があります。普段会わない人からの便りは心温まるものです。これを印刷したものだけで済ませたのではつまらないので、例年、年賀状の表書きだけは毛筆で書いています。葉書を書くために年末から筆と硯を出してあるので、ときどき、年始に書初めもしています。

 今年、書初めとして書いた文字は、「灋」。法律の「法」の旧字です。学部生のころに、ある先生が授業の最初の頃にこの字を板書され、字の由来を説明しておられたのを聞いた記憶があります。この字のことは長い間忘れていたのですが、2年ほど前に、中国人民大学でのシンポジウムに参加した際、校舎のロビーに掲げられたレリーフの中にこの字が書かれているのをみて、学部生の時の記憶が急に蘇って、いつか書いてみようと思っていました(1の写真がそのレリーフの文字です)。

 漢和辞典で調べてみると、字の成り立ちは、標準、あるいは公平の意味の「水」(さんずい)と神獣(つくりの上部)、退ける(つくりの下部の「去」)の会意で、神獣の聖断で悪事を取り去る「のり」の意味だそうです(『角川新字源』による)。今の字では、さんずいと「去」だけが残っています。元の意味が全く分からないほどに省略されてしまっていることになりますが、由来を尋ねてみると、漢字文化の奥深さをあらためて認識できます。画数が多くて、バランスをとるのが難しい字ですが、何度か練習して、2の写真の字が出来上がりました。コロナ禍も神獣が取り去ってくれますように。

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