2022/05/09
前回、研究科長室からのメッセージの名宛人として、主に高等司法研究科の在学生をイメージし、さらに研究科の修了生のことも念頭におくつもりであると申し上げました。前回は新入生に宛ててメッセージを発信しましたが、今回は、修了生に向けてメッセージを発信します。対象は、この3月に卒業された修了生はもちろん、本研究科創設以降の18年の間に、ここを巣立ったすべての修了生です。
まずは、現在、司法試験に向けて受験勉強の最終段階にいる修了生にエールを送ります。中には準備万端で余裕のある人もいるかもしれませんが、ほとんどの受験生は、やり残したことばかりが気になって、蒼白状態にあるのではないかと推察します。しかし、ほとんどの受験生がそうであるのなら、受験とはそういうものであって、そういうものとして受け入れたらよいのです。焦燥感をエネルギーに変えて頑張るのならまだしも、受験前から敗北感に苛まれているのは百害あって一利なしです。ここまで来たら、なるようにしかなりません。準備万端でなくても受かるときは受かります。
司法修習中の人や二回試験に合格して法曹人生を歩み始めたばかりの修了生の皆さんにもエールを送ります。司法試験から解放された皆さんにとって、法律は受験の対象ではなく、仕事のための手段というべきものでしょう。法律は端的に金儲けの手段だと、うそぶく人も(ひょっとしたら)いるかもしれませんが、法曹の仕事は本質的に社会のためにあります。法曹が仕事をしてくれるからこそ、法の支配が社会全体にもたらされるのです。このことを自覚し、自分の仕事に誇りをもって、活動して欲しいと思います。
既に社会に出て活躍している修了生の皆さんにも、今さらですが、エールを送ります。皆さんの中には、法曹として活動している人も、法曹以外の職業を選んだ人もいると思います。本研究科は法曹養成に特化した専門職大学院ゆえ、修了生の多くは法曹人生を歩むのですが、全員がそうだというわけではありません。しかし、誰もが縁あって今の職業に就いています。その縁は大切です。ちなみに私も法曹ではないし、法曹を志したこともないのですが、縁あって法曹養成の手伝いをしています。社会公共に奉仕する法曹の養成に携わることが、私にとって、社会公共に奉仕することであると思って、日々努力しています。
法曹として社会で活躍している修了生の皆さんが、社会公共に奉仕してくれていることに対し、法曹養成に携わる者の一人として、私は敬意を持っています。法曹の仕事は、事柄の本質上、他人のために行われます。もちろん、それが報酬ややり甲斐という形で自分に返ってくることは期待してよいので、他人のためだけに行われているものではないとしても、法曹の仕事は他人=社会がそれを必要とするからこそ成立することに変わりありません。自分の仕事がいかに社会公共に奉仕しているか、振り返って思い起こしてみれば、どれほどそれが素晴らしいことなのかが分かるに違いありません。
そして、できることなら自分の仕事(の一端)をもっと語って欲しいと思います。それは皆さんの仕事がもっと知られてしかるべきものだからです。広く社会一般に向けて語ってもらっても、皆さんの後輩である本研究科の在学生に向けて語ってもらってもよいのです。語る手段は色々あるでしょうが、本研究科では「OULS修了生が語る ただいま法曹中!」という場を用意しているので、ぜひここを利用して下さい。意義深いテーマについて、複数の修了生が議論を交わしてくれたら、それだけでも社会的に価値があります。
もし本研究科の在学生に思いを馳せていただけるのなら、このページの右を見て下さい。「ご寄付のお願い」というバナーに気づかれるでしょう。これは「修学支援事業基金」という「経済的理由により修学が困難な高等司法研究科の学生への奨学金支給事業」を表示しています。在学生への奨学金支給にしか用いられないのに、本研究科の修了生からの寄付がほとんどなく、最近はもっぱら教員の寄付によっているのが実情です。たとえ少額でも皆さんが協力してくれたら、奨学金支給事業が維持できます。クリックだけで寄付が可能ですから手間もほとんどかかりません。未来のために、ほんの少しのお力添えがあると嬉しいです。