TOPページ研究科長室より > 現在のページ

研究科長室より

お金の話

2022/08/04

 今回はお金の話をしようと思います。お金の話といっても、金銭や貨幣の一般論ではなくて、本研究科にとって必要なお金のことです。まず、そもそもロースクールを営むのにどのくらいのお金が要るのか、想像できますでしょうか。建物や施設を整備するのに資金が必要なことも、教育サービスを提供するのに不可欠な人員配置に資金が必要なことも自明ですから、具体的な金額や内訳が分からなくても、相当なお金が要るということは理解されるでしょう。 

 では、その資金はどのようにして賄われているのかと問われたら、どうでしょうか。最初に思い浮かぶのは授業料や入学金でしょう。学生が大学に支払う授業料や入学金は、教育サービスへの対価として徴収されていると想像するのは、不自然なことではありません。学生の立場からすると、お金を払って教育サービスを購入しているというイメージでしょうか。しかし、授業料や入学金だけで大学の事業が賄われているわけではないということも、おそらくはご存じでしょう。大阪大学のような国立大学法人の場合、国からの運営費交付金が最も大きな収益源であって、授業料・入学金の4倍程度あります。運営費交付金の原資は税金です。つまり、大学の運営に多額の税金が投入されているということになります。

 大学に対して多額の税金を投入する実質的理由はいくつか考えられます。例えば、大学は研究機関でもあるため、国も資金面から学問研究を支援する必要があり、そのために税金を原資とする運営費交付金を交付すると考えることが可能です。大学の生み出す知は狭義の教育・研究を超え、社会全体を豊かにするため、国の財政によって維持される必要があると考えることもできます。もちろん、学生の教育それ自体が社会にとって有為な人材の育成を意味するため、国は将来の社会発展に向け、学生に投資しているとみなすこともできるでしょう。以上のように捉えると、大学は授業料を支払う学生だけでなく(あるいはそれ以上に)、税金を納める国民に依存していることになります。同時に学生もまた、自らが支払う授業料だけで、教育サービスが受けられているわけではないことに気づくでしょう。学生の教育に必要な資金は、学生だけが負担するのではなく、国民的支援の対象なのです。 

このように教育サービスの提供にとっても大事な運営費交付金ですが、大学予算全体に占める割合は減少していく傾向にあります。減少の是非も問題ですが、取りあえず問わないでおきます。国の方針では、財源の多元化を目指して、大学は外部資金の獲得に努めなければならないとされ、運営費交付金頼みではなく(おそらく授業料の値上げでもなく)、大学の外部の様々な主体に働きかけ、教育・研究・社会貢献への理解を求めていくとされています。実際、大学(大阪大学)全体としては、大型の外部資金獲得に向けて動いています。 

 本研究科に限れば、巨額の研究施設や実験機械を必要とする理系部局と異なり、学問研究のための資金は、相対的に小さいと言えます。それでも、運営費交付金だけでは到底足りないため、外部資金の獲得は不可欠です。研究者教員は研究計画書を作成して自らの研究の意義を外部にアピールし、研究計画の採択を目指します。それが採択されて研究用資金が得られたら、その資金を用いて研究計画を遂行し、そこで成果をあげることができたら、また次の研究計画を立て、研究の進展を図るという過程を繰り返しています。 

 研究用資金はそうやって賄うとしても、教育用資金は同じようにはいきません。ここでは相変わらず内部資金の占める割合が大きいのです。増え続ける需要に応えることは難しくなるばかりですが、支えようとしてくれる人もいます。青雲会や法曹会といった同窓会組織は、各種の行事に対して、財政的な支援をしてくれています。今後は修了生の皆さんからの寄付にも期待したいところです。「経済的理由により修学が困難な高等司法研究科の学生への奨学金支給事業」として「修学支援事業基金(高等司法研究科)」が設けられていますが、少額で構わないので、ここに寄付してもらえたら、後輩たちの育成支援になります。実は最近、修了生の一人から寄付がありました。これは本当に嬉しい出来事でした。修了生の皆さんが後輩たちへの奨学金支給に協力して下さったら、これに勝る喜びはありません。

一覧に戻る

▲ PAGE TOP