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研究科長室より

司法試験の在学中受験について

2022/12/09

 従来、司法試験は5月中旬に実施されていました。しかし、在学生の皆さんは既によくご存じのように、来年度から司法試験は7月中旬に実施されることになっています。二ヶ月も後倒しになった理由は、来年度からいわゆる在学中受験が始まるため、この制度に合わせなければならなくなったことにあります。在学中受験のことをご存じない方のために、簡単に申し上げると、それは、法科大学院の在学生のうち、一定の要件を満たす者に司法試験の受験資格を認め、法科大学院の修了前に司法試験受験を認める制度を指します。さらにざっくりと言うと、法科大学院生が2年次末までに所定の単位を修得すれば、3年次の7月中旬に実施される司法試験を受験してもよいとされるとともに、同試験に合格し(合格発表は11月上旬)、かつ、翌年3月に無事に法科大学院を修了できれば、直ちに司法修習生になれるというものです。

 これまでだと、法学未修者は3年間、法学既修者は2年間、法科大学院で学修し、3月末に修了した1ヶ月半後に司法試験を受験するのが通例でした。それが来年度以降、2年次修了時に選択を迫られることになります。すなわち、これまで同様、法科大学院の課程を修了した後に受験するか(ただし、受験は修了した3ヶ月半後の7月中旬になる)、法科大学院在学中の3年次の7月中旬に受験するかの選択です。どちらを選択するかの判断は、受験する法科大学院生の客観的・主観的条件によって左右されます。3年次の夏の時点で受験できる資格と資質を持ち合わせた法科大学院生であれば、在学中受験に挑むことになるでしょうし、そうでないのなら、これまで同様、法科大学院修了後に司法試験を受験する道を選ぶことになると一応言えます。

 在学中受験の制度は、従来の制度と比較して、確かにメリットがあります。在学中に受験すれば、合格通知も在学中に受けられますし、法科大学院修了後、直ちに司法修習に進むことができるため、いわゆるギャップタームなく、法科大学院から司法研修所に移行できます。タイム・パフォーマンスを重視する人には、魅力的に感じられるでしょう。特に法学既修者は、2年次4月に入学し、3年次3月に修了すれば、直ちに司法修習生になる可能性があるため、時間的観点から見れば、予備試験と司法試験の両者に合格して司法修習生になる場合と実質的に変わらないと理解されるかもしれません。予備試験と司法試験という合格するかどうかが不確実な試験を2つも受験するよりも、法科大学院の既修者コースに進学し、在学中に司法試験を受験する方が(システム理論風に言えば)不確定性を縮減できると思わせてくれるでしょう。

 それゆえ、既に法科大学院に在学している人が、在学中受験に挑戦しようと思うことにも一理あります。特に本研究科の2年次生の多くが、来年夏に司法試験を受けようと思っていることは、容易に想像できます。2年次修了の時点で受験資格を得られそうな人であれば、来年夏の時点で、合格を確信できる人もきっといるだろうと推測します。もちろん、受験資格を得た人の中には、合格を確信できず、一か八かで受験せざるを得ない人もいるでしょう。そういう人の中には、来年の受験に失敗したとしても、5回の受験回数のうちの1回分を消費したに過ぎず、よい経験ができたとポジティブに解し、法科大学院修了後の翌年度の司法試験に備えようと割り切る人もいるでしょう。それはそれでその人の選択だと思います。

 ただ、実際に在学中受験に挑む前に冷静に判断して欲しいと思うのです。これまで法学既修者は法科大学院入学後、少なくとも25ヶ月半を経てから受験していました。在学中受験となると、15ヶ月半で受験することになります。従来よりも10ヶ月も短い期間で受験するのです。私見によれば、法科大学院生活最後の10ヶ月は学力が飛躍的に伸びる時期に当たります。その飛躍期の到来前に受験する以上、飛躍などなくても試験に太刀打ちできる実力が備わっている必要があります。もちろん既述のごとく、勝算の見込みなど考えず、翌年の予行演習のつもりで受験するという選択もあります。その場合、受験に失敗すれば、その結果を背負って卒業することになります。受験失敗など、たいしたハプニングではないと考えることもできますが、それなりの精神的ダメージを被るおそれも否定できません。だから来年7月の受験を検討している2年次生には、周りの雰囲気に流されることなく、自分の選択が自分にとって本当に有意義なのか、慎重に判断して欲しいと思うのです。

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