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研究科長室より

司法試験について考える

2023/07/10

 法曹になろうとする者にとって避けて通れない関門が司法試験ですが、今月はその司法試験の実施月です。実施期間は12()から16()までの14()を除く4日間です。法科大学院生にとっては、ロースクール入学後の当面の目標が司法試験の合格であることから、当の受験生はもちろん、来年度以降の受験を想定している在学生にとっても、司法試験の実施期間は、特別なものとみなされるでしょう。このメッセージは司法試験の開始直前に公開される予定であり、本来であれば、司法試験受験生に対して威勢のよいエールを送るべきところ、今年の特殊性に鑑み、少し冷静に司法試験のことを考えてみたいと思います。

 昨年度までの司法試験は5月中旬に実施されていました。それが今年度から2ヶ月の後ろ倒しになりました。その理由は、関係者であればよくご存じのとおり、今年度から在学中受験が始まったことにあります。これまでは、原則として、法科大学院を修了していないと受験自体ができなかったところ、これからは、一定の要件さえ満たせば、法科大学院3年次に在学している者も受験できるようになり、3年次の修了後すぐに司法研修所に入所できるようになりました。2ヶ月の後ろ倒しになったのは、在学中の受験を認める以上、これまでのように5月中旬の受験では、時期として「早すぎる」し、かといって、3年次の修了間際だと、試験の採点等の業務に充てる時間が確保できない、といった諸事情が考慮されたためでしょう。

 今年度は旧制度から新制度への移行期です。受験者の多くは、今年3月に法科大学院を修了した人だろうと思われますが、そこに2度目、3度目の受験生と法科大学院3年次生が加わるので(もちろん、4度目、5度目の受験生や予備試験の合格者も加わる)、必然的に、受験生の数は多くなります。法務省の発表では、昨年の出願者数が3,367人だったところ、今年は4,165人に増えており、在学中受験者はその26.75%の1,114人だそうです。今年3月の修了者にとっては、例年よりも2ヶ月遅い受験となるため、その分、多くの準備時間が得られたと思われるかもしれないし、少し間延びしたと思われるかもしれません。これに対して、既修者の在学中受験者にとっては、入学して13ヶ月あまりでの受験ですから、おそらく時間の余裕は感じていないでしょう。

 本研究科でも、3年次の在学中に受験する人は少なくありません。所定の要件を満たした人の約3分の2が受験するようです。法科大学院によっては、所定の要件を満たした人のほぼすべてが受験するところもあるようですし、本研究科の在学中受験者が格別多いわけではないものの、早期の受験に挑む準備ができている人ばかりではないことを思うと、送り出す側としては、どうしても不安が先に立ってしまいます。もちろん、在学中受験をする人に対しては、受験すると決めた以上は、今回の受験が自分にとって有意なものになると自覚して、試験に臨んで欲しいと願っています。一発勝負の試験の結果は、本人の実力だけでは計れないところがあり、何が起きてもおかしくないと思って下さい。他方、修了生の受験生の皆さんには、例年よりも延びた2ヶ月をポジティブに捉えてもらったらよいと思います。

 本研究科では、今後の動向を視野に入れた検討を始めています。特にスタートしたばかりの在学中受験は前例がないだけに、今後の動向も不透明です。後期の授業はどのような雰囲気になるのか。11月の合格発表時に、どのくらいの人が合格し、どのくらいの人が不合格になると告げられるのか。合格者に対してどのようなメニューを提示し、不合格者に対してどのようなケアを施すべきか。すべて手探りで行わなければなりません。移行期の司法試験ゆえの課題であると考えることもできますが、この課題に対する対応次第で、今後に及ぼす影響も変わるため、心して取り組まなければならないと思っています。

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