TOPページ研究科長室より > 現在のページ

研究科長室より

授業との向き合い方

2024/05/17

 春夏学期が始まって1ヶ月あまり経過しました。4月に入学した皆さんも授業に慣れてきた頃かと思います。もし授業に付いていくことができなくて、焦りを感じたり、息切れしてきたりしている人がいるのなら、自分のコンタクト・ティーチャーに相談してみましょう。コンタクト・ティーチャーは定期面談のときでなくても相談に乗ってくれます。もちろん、自分の都合だけで何でもいうことを聞いてもらえるわけではないものの、真摯に話を受け止めて適切なアドバイスをしてもらうことができます。

 新入生ももはや新入生ではないといわなければなりません。春夏学期も既に3分の1を過ぎています。在校生の多くの皆さんにとって、ロースクール生活も今や通常モードに入っているでしょう。通常モードということは、生活スタイルが一応確立していて、いつどこでどのように振る舞うかについて、だいたい決まったとおりに生活している、ということです。生活の規則正しさについては人それぞれでしょうが、生活リズムはだいたい一定してきているのではないかと推測しています。

 授業への参加についてもだいたいペースを掴んでいると思いますが、正しいスタイルになっているかどうかについては、今一度確認して、場合によれば、修正を加えた方がよいでしょう。ロースクール生活は基本的に授業中心の生活になっているはずです。1年生はもちろん、2年生も必修科目の授業がたくさんあるので、必然的に授業中心の生活にならざるを得ないからです。そのため、授業への取り組み方を誤ってしまうと、ロースクール生活そのものに支障を生じさせてしまいます。ここで躓かないためにも、今は授業との向き合い方を反省してみるちょうどよい頃合いなのです。

 在学生であれば既にお分かりのように、授業に臨むに当たっては、授業範囲について必ず予習をして備えておかなければなりません。何をどの程度予習すればよいのかについては、シラバスをはじめとして、事前に何らかの指示がなされていますから、テキストの該当箇所、事前配付資料、検討対象としての判例などに事前に目を通し、自分なりに理解の確認をしておく必要があります。もちろん、予習段階で全てを完全に理解することまでは期待されていません。完全な理解への到達は、復習段階まで先延ばしにしても構わないのです。しかし、調べればすぐに分かることなら、予習段階で調べて分かっておいて欲しいところです。

 私自身も必修科目の授業を受け持っていますが、授業時に学生の予習不足を感じることがしばしばあります。私の授業の場合、事前に質問事項を提示していることから、少なくともその質問事項については、授業中に質問されることが予測されるにもかかわらず、そのような問題があることを初めて知りました、といわんばかりの反応に出会います。そのような反応を見るにつけ、自分のやってきたことが報われない徒労感にさいなまれます。私の徒労感はともかく、予習段階での理解が不十分だと、授業段階でそれを補わざるを得なくなり、授業段階でクリアできていたはずのことが復習段階に先送りせざるを得なくなって、どんどん後回しになります。学修過程を全体として見ると、とても非効率です。

 ロースクールの創立時は、とにかく莫大な予習用資料が学生に手渡されていました。それを読むだけでも(その前にそれをコピーするだけでも)かなりの時間を費やさなければならなかったものですが、今は情報が必要最小限に選別されていますし、電子データで配信されるので、端末で簡単に処理もできます。その意味で効率化はかなり進展したといってよいのですが、その情報を実際に使える知識として定着させていくためには、少しの工夫と多大な努力が必要です。いくらデジタル技術が進展してきたといっても、それだけで知識が身に付くわけではありません。陳腐な結論になりますが、知識を血肉化するには、結局、自分の頭と肉体をフル活用して一生懸命勉強するほかないのです。

一覧に戻る

▲ PAGE TOP