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研究科長室より

カラス?

2022/01/05

 年末に休みを長めに取ったので、休みの間に読書三昧の時間を過ごしました。暮れから正月にかけて読んだのは『イチケイのカラス』のノベライズ版(上下巻、扶桑社刊)です。原作は刑事裁判官が主人公の漫画(浅見理都作、単行本1巻~4講談社刊)で昨年テレビドラマにもなっています。ノベライズ版では、末尾に配役が掲載されているのでドラマの設定が前提になっているようです。裁判官の一人が女性になっていて、原作とは少し印象が違います。因みに、この作品の題名は、主人公の裁判官が所属する架空の地方裁判所の「第1刑事部(イチケイ)」の裁判官(黒い法服を着た姿)を指しています。漫画では、法服を着た裁判官の横顔とカラスの頭が並べて描かれていて、なるほど「カラス」だと思うのですが、女性の横顔だったら「カラス」の印象になるだろうかと思いました。 

 原作の漫画について、主人公の属する刑事部の部長のモデルが無罪判決を多く出し、しかも上訴でほとんど覆されることがなかった著名な元裁判官であることを聞いていたので、第1巻は買って読んでいました。ノベライズ版で残りを読んだ感じです。原作には刑事事件を多く手掛ける弁護士と元裁判官の法律監修が加わっていて、私の目からも安心して読めたのですが、ノベライズ版は用語が不正確だったり、設定に難があったりします。これはご愛嬌というところでしょうか。しかし、裁判所と裁判官に興味を持ってもらうための読み物としては、十分楽しめるでしょう。 

 この作品で描かれる裁判官には2つのタイプがあります。一方は事件を迅速に処理し、「赤字」(既済事件数が新受事件数を下回る状態)を出さないことを重視して、個々の事件に悩まない裁判官。もう一方は、時間や手間を厭わずに事件の真相に迫り、被告人にも被害者、検察官や弁護人などの事件関係者にも納得してもらえる判断をしようとする裁判官です官僚的な裁判官と職人的な裁判官というとらえ方もできるかもしれません。一つの合議体の中で、タイプの違う裁判官が事件と向き合うところと、書記官などとのやりとりなど、面白い場面があります。肩の力を抜いて読んでみてください。

 今年もよろしくお願いします。

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