2022/10/03
今年の司法試験の合格発表は9月6日にありました。本研究科では、法務省からのデータ通知を受け、教務係において直ちに合格者名簿を作成し、過去のデータとの比較を行うとともに、とりあえずの結果分析を行いました。その概要は、研究科ウェブサイトで公開済みですし(https://www.lawschool.osaka-u.ac.jp/barexam/index.html)、また、今月配布予定のニューズレター24号にも、少し異なる角度から結果分析をしたものを掲載しています。私は、日頃から、司法試験至上主義には批判的な態度をとっていますが、司法試験至上主義を批判する・しないに関わらず、法曹への入り口となる司法試験に強い関心を持ち、これに対処することは、法曹養成機関である法科大学院にとって、必要不可欠であると思っています。それゆえここでも司法試験の結果が意味すると思われるところを取り上げます。
まず、本研究科の結果をあらためてデータで振り返ってみます。今回の受験者は111人(昨年115人)で、そのうち短答式試験の合格者が95人(昨年94人)、短答式の合格率が85.58%(昨年81.74%)、最終合格者は51人(昨年47人)、最終合格率は45.95%(昨年40.87%)でした。合格者数も合格率も昨年を上回っていますが、予備試験合格者の受験者最終合格率(97.53%)はもちろん、法科大学院でトップの受験者最終合格率を出した京都大学(68.00%)と比較すると、見劣りすることは否めません。せめて受験者の半分は合格してしかるべきであるとするなら、あと5人は合格して欲しかったと思う気持ちにもなります。
しかし、このような感想は組織単位で見たときの当局的なものの見方に過ぎません。受験者個人の立場から見れば、合格した人は、どこの組織に属していようと、等しく合格の栄に浴します。合格できなかった人は、同じく所属に関係なく、この結果を受け入れて次に何をするのか、考えなければなりません。個人の視点から見たときは、組織単位のそれとは異なる評価がなされます。もちろん、合格した人は、いずれにしても祝福されるでしょう。司法試験合格が法曹への関門とされている以上、法曹になろうとする者がこれに合格することは必要条件です(十分条件ではありません)。このハードルの高い必要条件をクリアしたのですから、そのことは称えられてしかるべきです。今月17日に大阪弁護士会館で開催される合格者祝賀会にも招待されます。祝賀会にはぜひご参加下さい。
合格できなかった人は、次の一手を考えなければなりません。法曹になることだけが人生ではないので、進路再考も考慮に値しますが、法曹を志し、せっかく法科大学院を修了したのに、ここで諦めてしまってもよいのか、自問自答してみましょう。こういうときは一人だけで考えるのではなく、誰かに相談しましょう。本研究科も修了生に手を差し伸べています。勉強は一人でするものですが、ひとりぼっちでするものではないと、以前申し上げました。法科大学院で学ぶということは、在学中に限られる話ではなく、修了後も一定の関係が続くと考えてもらってよいのです。ニューズレター24号にも、司法試験不合格の後、泣きながら敗因を分析し、同時に本研究科の先生方のアドバイスも受けながら、再起を図って、翌年見事に合格を果たした修了生の体験談が掲載されています。ぜひ参考にして下さい。
最後に在学生に向けて申し上げます。先月も書いたように、法科大学院における成績は、司法試験の合否と強い相関性を持っています。今年は特にその傾向が強く表れました。学内成績の上位者は軒並み合格しました。特待修了生(成績上位20名)は全員一回目合格です。私は普段「成績上位者だからといって、最初に受けた司法試験に必ず合格するとか、成績下位者は司法試験を受けても合格できないというわけではない」と口にしているのですが、少なくとも成績上位者の合格率は益々高くなっています。学内成績と司法試験の合否の間に強い相関性が見られる以上、成績上位者でいることは司法試験合格への確実性を高めるはずです。このことは、日頃から授業の予習復習に努め、学内成績をよくすれば、合格に一層近づくと示唆するものでしょう。
しかし、願うことなら、仲間と一緒に実力を高め合って、モチベーションを維持しながら、法曹への入り口を通過できるよう、日頃の学習を心がけていただきたいのです。さらに理想を言わせてもらえば、本研究科の修了生であれば、成績上位者でなくても、司法試験くらいなら合格するという日が来ることを願ってやみません。