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研究科長室より

試験の季節

2024/07/29

 7月は試験月間になりました。試験とは主としてペーパーテストを意味します。法科大学院において試験といえば、真っ先に司法試験のことが思い浮かぶものですが、夏と冬に行われる定期試験のことも忘れるわけにはいきません。もちろん、法科大学院に入るためには、秋に行われる入学試験にも合格しなければならないので、これもまた大事ですが、在学生の皆さんにとって入試は過去の出来事ですから、現時点で念頭におくべきは、司法試験と定期試験ということになるでしょう。7月はその両方と直面しなければならない月間に当たっています。

 2年前まで司法試験は5月に行われていました。受験生は3月に法科大学院を修了して、その1ヶ月半ほど後に受験するというのが、オーソドックスなパターンでした。ところが、在学中受験の制度が導入され、受験日が10ヶ月程前倒しになったことによって、修了前の3年次生が7月に受験することが普通になろうとしています。法科大学院の課程を修了したわけではない在学生が司法試験を受けることには、当の受験生だけでなく、法科大学院関係者の間にも、一定の危惧がありました。しかし、先に進む機会があるのならそれを逃すべきではないという意識が通念化するのに時間はかかりませんでした。今や主流は在学中受験です。

 今年度の司法試験は7月10日から14日までの間に実施されました。本研究科の3年次在学生もその多くが受験したものと思われます。3年次生に対し本研究科は、学期を春学期と夏学期に分け、受験生が夏学期に授業を受けず、受験に専念できるようなカリキュラムを設けました。3年次生の大半が在学中受験を目指す以上、そのことに配慮した仕組みにすること自体は自然な対応でした。ただ、入学して1年3ヶ月しか在籍していない既修者学生に司法試験の本番受験を勧めることには、今もって複雑な気持ちを拭えません。受験を済ませた在学生には、次の段階に向けて気持ちの切り替えを願いたいところです。

 さて、7月下旬に入ると、今度は春夏学期(あるいは夏学期)の定期試験が始まります。この定期試験は、特に1年次生と2年次生の学期中の成果を計るとともに、今後の展望を見定めるための重要な指標を得る極めて大事な試験です。未修者の2年次生を除き、ほとんどの1・2年次生にとって、今月から来月にかけて実施される定期試験が、初めて経験する法科大学院での定期試験でしょう。既に耳にしたかもしれませんが、定期試験の成績と司法試験の結果の間には、強い相関関係があることが統計的に明らかになっています。1年後(または2年後)に在学中受験に挑戦する意欲のある人は、このことも自覚して備えて欲しいと思います。

 本研究科には以前から、上級生による定期試験対策「講座」があると聞いています。個人的な感想としては、上級生による下級生へのアドバイスの表れという点で、麗しい慣習です。法科大学院で学ぶということの中には、教師から学ぶということと、自分一人で学ぶということのほかに、同級生同士で学ぶということと、上級生(あるいは下級生)から学ぶということが含まれていると思うからです。人の言うことを鵜呑みにしたり、人に流されたりすることさえなければ、他者と切磋琢磨しながら学ぶことこそが、法科大学院で学ぶ醍醐味であるといってよいでしょう。

 7月は本研究科の教師にとっても当然に試験月間になります。こちらは作問と採点というかなり大変で憂鬱な作業を強いられる期間という意味です。受験生の皆さんは関知していないでしょうが、教師にとって、作問は本当に大変だし、採点は本当に憂鬱なのです。良問はそう簡単に得られるものではないため、毎回、あれこれ思案しながら呻吟して作問します。また採点も、ミスがないように気を張り詰めて、ことに当たっています。いずれも作業が終わった直後は心から安堵します。私はいつも「そうはいっても受験生よりはマシ」と自分に言い聞かせながら、この難行?に従事しています。

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