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研究科長室より

入試の重要性と非重要性

2025/09/22

 本研究科において試験と言えば、まず司法試験です。7月に実施される司法試験に向け、3年次の在学生と修了生は(やや大げさに言えば)人生を賭けて、それと取り組みます。次いで期末試験です。中間試験や小テストが実施されることもあるとはいえ、7月下旬から8月上旬と1月下旬から2月上旬にかけて実施される期末試験は、在学生に対して死活的な意味を持つこともあります。司法試験に合格した在学生が、学年末の期末試験に失敗して留年を余儀なくされ、司法研修所への入所を1年遅らさざるを得ないこともあるほど、人生設計を左右する効果を持ち得るからです。

 しかし、研究科にとって、ある意味、最も重要な試験は、司法試験でもなければ、期末試験でもありません。最も重要な試験は入学試験です。入試に合格しなければ、本研究科の学生にはなれないため、在学生・修了生にとっても、極めて重要な試験だったはずですが、既に在学している・修了している人にとって、それは過去の話であって、もはや関心の外でしょう。入学後に合格決定が取り消される場合もないわけではないのですが、かなりのレアケースですし(私自身は目にしたことがありません)、入学さえしてしまえば、入試のことなど忘れてしまっても、特に差し支えないのが通常です。

 ただし、入試のことなど忘れてもよいというのは、在学生・修了生の立場から捉えた話であって、研究科にとっては、片時も忘れることのできない最重要事項です。そのために研究科内にはアドミッション委員会という専門機関が設けられており、入試事項について、絶えず細やかな検討が続けられています。要するに、研究科にとって、優秀でかつ将来性のある学生を入学させることは、入学後に教育を施すことや修了後に連携することと同じくらい重要なことなのです。良い人を採用することは、いかなる組織においても重要事項ですが、良い学生を入学させることは、教職員の採用人事とは別の意味で、研究科の将来を左右する死活事項だと考えているのです。

 本研究科の入試は9月と10月に実施されます。今年は、9月6日の未修者コース・特別選抜を皮切りに、9月17日の法曹コース5年一貫型・特別選抜を経て、10月18日及び19日の既修者・未修者コース・一般選抜(18日には法曹コース開放型・特別選抜も実施)まで、3つの入試を実施することが予定されています。先に申し上げたように、入試は研究科にとって最重要事項ですから、アドミッション委員会はもちろんのこと、研究科の教職員は総出で入試に関与します。試験問題の作成・点検・採点は当然ですが、試験監督や試験会場整備など、裏方の仕事もこなします。入試説明会や入試案内などの広報的活動も大事な仕事です。

 この原稿の執筆時点で、9月の入試は既に実施済みです。合格発表は来月なので、まだ終わったということはできませんが、少なくとも試験当日はこれといったハプニングなく、穏やかに終了しました。もちろん、これは入試の主催者側から見た感想に過ぎず、個々の受験者の側からは、思うように解答できなかった、想定外の問題が出たといった感想があるかもしれません。入試もまた一発勝負の試験であり、必ず合否が決まることから、個々の受験者にとって、良い結果もあれば、悪い結果もあるのは避けられません。できることなら、相思相愛?の受験者に合格の報を届けたいところですが、互いの思いが通じるかどうかは、神のみぞ知るでしょう。

 4月の入学者の中には、毎年、最下層の合格順位の人がいます。そこに補欠合格の人が含まれることもあります。その人たちは最下層の成績でスタートする人だとみなすこともできます。しかし不思議なことに、その人たちが在学中もずっと最下層の成績順位でいるというわけでは必ずしもないのです。また、必ずしも最下層の成績で修了するというわけでもありません。それどころか、成績上位者として修了することも珍しくありません。要するに入試は、本研究科に入学してやっていけそうな人を選抜しているだけで、入学後の成績はまた別なのです。入試成績がその後のすべてを決めるわけではないということです。

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