2025/11/25
3月の本欄で「今年は法科大学院にとって『CBT元年』になる」とお伝えしました。来年度の司法試験からCBT(Computer Based Testing)方式が採用されることに伴い、司法試験受験生はもちろん、受験生を抱える法科大学院もまた、CBT化に向けて対応をしなければならなくなり、その本格的な始動が今年から始まるとお伝えしたかったのですが、あれから8ヶ月が経過し、各法科大学院においても、ポツポツと具体的な方策が打ち出されています。
本研究科でも法務省が配布している司法試験等CBTシステム(体験版)を使ったプレテストを実施するなど、受験生に場慣れを促すための機会を提供してきました。さらに、少ない台数ではありましたが、練習用のPCも購入しました。もっとも、実際に購入したのは当初の仕様とされていた16インチのノートPCでした。法務省が受験会場をCBTセンターに設けると宣言をして、23インチのデスクトップPCに仕様変更したため、こちらの思惑は外れることになりました。昨年からずっと続いているCBT騒動は、こういった出来事の連続を指すといってもよいかもしれません。
司法試験CBTに向けた法科大学院の取組みの中で最も大きなものが期末試験CBTです。司法試験のプレテストではなく、法科大学院の期末試験をCBT方式で行うことにすれば、本番に近い緊迫感と臨場感をもって、CBTと向き合うことができます。場慣れを促すための機会の提供として、これほどふさわしいところはないといっても過言ではありません。そのためでしょうか、今月上旬に公表された法科大学院協会のアンケート速報でも、全法科大学院の7割ほどが、今年度中に学内試験にCBT方式を導入すると回答しています。
本研究科でも、この秋冬学期の期末試験時から一部の科目でCBT方式を採用する予定にしています。具体的にどの科目の試験をCBT化するかについては、教務委員会が慎重に検討してくれています。在校生の皆さんには、少なくとも1回、CBT方式による受験を経験して欲しいと思っていますが、いきなり全面導入して、予想外のハプニングに見舞われると対応できなくなるので、試験中にある程度のハプニングが生じることは織り込み済みの下で、対応可能な範囲を見定め、何かあっても十分にリカバーできるような態勢を整えておくことが、現時点では求められていると考えています。
本研究科の一部の授業では、期末試験でCBT方式が導入される前に、中間テストや小テストの機会を利用した試行がなされています。先日、私もその現場を見学させていただきましたが、大きなハプニングはなく、無事に終了したのは喜ばしいことでした。ただし、初めての試みでもあったため、まだ誰もこの方式に慣れておらず、不慣れから来るぎこちなさは避けられないと感じました。従来の手書きの試験であれば想定可能なことが、CBT方式では未知の領域にあると思わされました。不正対策についても、技術的トラブル対策についても、CBT特有(あるいは特定のアプリ固有)の問題があると考えられることから、期末試験CBTの実施に際しても慎重にならざるを得ないのです。
とはいえ、当局が司法試験CBT化のスケジュールを変更しない限り(来年7月の司法試験CBTが延期されるなどということはあるのか!)、法科大学院としては、期末試験CBTをはじめとするCBT化対応を早急に図るほかありません。本研究科としては、引き続き外部情報を収集するとともに、内部の連携を強めて、試行を続け、来年7月の本番に向けて、期末試験を基軸に据えたCBT化を図っていくつもりです。
