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研究科長室より

地域とともに育てる法曹――実務体験から広がる可能性

2026/10/14

 司法試験合格者の6割が東京の3つの弁護士会に集中する一方、2025年には全国8つの弁護士会(単位会)で新規採用がゼロであったという。地域の司法を支える新たな担い手をどう育て、迎え入れるか。この偏在は、法科大学院にとっても重く受け止めるべき課題である。学生が地域の司法の現場に触れ、そこで働く将来を具体的に描ける機会を、教育の中にどう位置づけるかを考えてみたい。

 地域で暮らす人々の困りごとに耳を傾け、法の力で解決への道筋を示す。地方法曹の養成は、こうした役割を担う人材を育て、地域社会につなぐ営みである。地域での仕事を進路の選択肢にするには、求人情報を届けるだけでは十分ではない。どのような相談が寄せられ、弁護士が依頼者と向き合い、地域の人々や組織と関係を築いているのか。その日常を知ることが、地域で働くことへの理解を深める。授業で学んだ法が目の前の生活や事業を支える場面に出会う経験は、学修の意味を確かめる機会にもなる。

 本研究科には、すでにその足掛かりがある。各地で活躍する修了生たちのご厚意から始まった、愛媛、福岡でのエクスターンシップである。愛媛では、OBの兵頭毅弁護士を通じて「弁護士法人たいよう」で、福岡では、OGの小栁美佳弁護士を通じて「弁護士法人 明倫国際法律事務所」で、学生が実務を学ぶ機会を得ている。後輩の学びを支えてくださる修了生の協力が、学生を地域の司法の現場へと導いている。両事務所と修了生への感謝を大切にしながら、このつながりを今後の取組を広げる基盤にしていきたい。

 エクスターンシップでは、地域で活動する法曹の姿を身近に見て、仕事のやりがいや難しさを知り、自分がどのような法曹になりたいのかを考えることができる。その経験は、将来どの地域で働くことになっても、依頼者の生活や地域の事情を踏まえて問題を捉える姿勢の土台になる。同時に、受入れ側にとっても、学生の関心や考えを知り、次の世代とつながる機会となる。こうした相互の理解を育てることが、地域と学生を結ぶ第一歩となる。

 この実績を踏まえ、修了生ネットワークを起点として、まずは近畿圏の弁護士会と協力し、地域の実務に触れる機会を広げていきたい。各地で活躍するOB・OGとのつながりを生かし、弁護士会との連携によって受入れ先の裾野を広げながら、継続的に学生を送り出せる仕組みづくりを進めていきたい。近畿圏でも地域によって実務の環境や課題は異なる。学生がそれぞれの地域の特色を知り、自らの関心に応じて学べるよう、受入れ先と教育の目的を共有することが重要である。

 取組を充実させるためには、実習前の準備と実習後の振り返りも欠かせない。守秘義務や実務に臨む姿勢を確認した上で参加し、経験から何を学び、どのような課題を見いだしたのかを大学に持ち帰る。さらに、参加者の声を次の学生に伝え、修了後も地域で働く法曹との交流を続けられれば、一度の実習が継続的な学びと進路形成につながる。学生の地域への関心がどのように変化したかを把握し、教育内容の改善に生かすことも大切にしたい。

 地方法曹の養成は、大学だけで完結するものではない。大学、弁護士会、そして各地で活躍する修了生が、それぞれの経験と役割を持ち寄ることで、学生と地域を結ぶ道が育つ。修了生たちのご厚意から生まれた愛媛、福岡でのエクスターンシップを基盤に、まずは近畿圏で連携を広げる。その積み重ねを通じて、地域を知り、地域に信頼され、地域とともに歩む法曹を育てていきたい。

 *修了生の兵頭毅弁護士(弁護士法人たいよう)、小栁美佳弁護士(弁護士法人 明倫国際法律事務所)には、後輩たちの学びを支えていただき、本当に感謝しています。これからも本研究科にお力添えいただければうれしく思います。

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