2025/04/07
新学期が始まりました。今年も多くの新入生を迎え入れ、本研究科の最初の行事であるオリエンテーションを行いました。当日は、桜もいい感じで色づいており、新学期の初日にふさわしい晴れやかなスタート行事になりました。私も式典の冒頭で新入生の皆さんに対して、恒例の祝辞を述べさせていただきました。そのとき語ったことの一部をここで再現しながら、新入生の皆さんに向けて、あらためてメッセージを送りたいと思います。
本研究科はこれまで1500名弱の修了生を送り出してきました。その7割近くの人が法曹として法律実務の世界で活躍してくれています。修了生の7割近くが法曹になっているということは、修了生の多数派は法曹になるということを意味します。法曹になるのに特別に狭い門をくぐらなければならないとか、細い道を通らなければならないわけではありません。普通に頑張っていれば、大抵の人が法曹になれるといってよいでしょう。法曹への途は決していばらの道ではないのです。
しかし、法曹への途がいばらの道でないからといって、それが楽勝コースかといえば、もちろん、そんなわけはありません。皆さんも本研究科の入学時までに、それなりに努力されてきたと思います。中には運が良かっただけと謙遜される人もいるかもしれませんが、たとえ人生に運の要素が常に付きまとうものだとしても、運の良さだけで乗り切れるほど人生は容易いものではありません。やはり実力が必要です。法曹として活躍できる人になるには、いくつかの関門を突破しながら、地道に実力を身につけていくほかありません。
皆さんにとって当面の、そして最大の関門は司法試験でしょう。これが相当ハードルの高い関門であることは否定しようもありません。ロースクールで皆さんは、それなりに高いこのハードルをいかに飛び越えるかという問題と取り組むことになります。ロースクール生活の目的は、司法試験を突破できるだけの実力を身につけることだと思っている人もいるはずです。その考えは間違っているわけではないとはいえ、司法試験突破力を獲得することがロースクール生活を全面支配するほどの重みを持ってしまうと、人生に歪みが生じてしまう危険があります。たかが司法試験されど司法試験というくらいの心持ちでいるのがよいのです。バランス感覚が必要だということです。
それに、司法試験に受かるか、受からないかだけを基準にロースクール生活を捉えてしまうと、せっかくのロースクール生活が煤けたものになりかねません。ここはもっと豊かなところです。幸い、本研究科で一定の成績を上げた人は、司法試験に一発合格できるというエビデンスがあります。ですので、皆さんがなすべきことは、まず本研究科の授業と真剣に取り組むことです(予習復習も含む)。授業と真剣に取り組んだ結果として良い成績を獲得できれば、その流れで司法試験にも合格できます。
司法試験の勉強に限らず、授業の予習復習と取り組む際も、仲間と一緒に協力し合うことが大切です。それがロースクール生活を豊かにする秘訣です。一人では成し遂げられないことも、誰かと一緒なら何とかなります。一人だと独りよがりになってしまうことも、友人の意見と摺り合わせていけば、落ち着きどころの良いものになります。同期の仲間と交流するだけでなく、先輩や後輩といった上下の交流も、皆さんの見識を深めてくれますし、同時に皆さんの心を豊かにしてくれます。
私たち教職員も、皆さんのロースクール生活を充実したものにするため、協力を惜しみません。良い授業を提供することはもちろんですが、ほかにも、様々な有益な機会を提示いたします。本研究科が用意する様々な行事については、研究科のウェブサイトを始めとする各所で広報しています。私たちが発する声に耳を傾けてもらえれば幸いです。様々な行事に積極的に参加し、そこで提示される機会を自らの側で存分に活かしながら、実りの多いロースクール生活を送ってくれることを期待しています。