TOPページ法科大学院紹介 > 現在のページ

修了生からのメッセージ

堀ノ内佳奈さん
◆ プロフィール
  • 2010年3月 私立池田学園池田高等学校卒業
  • 2014年3月 鹿児島大学法文学部法政策学科卒業
  • 2017年3月 大阪大学大学院高等司法研究科(未修者コース)修了
  • 2018年11月 最高裁判所司法修習生(第72期)
  • 2020年1月 弁護士登録(大阪弁護士会)室谷総合法律事務所入所
◆ 今の仕事のやりがいはなんですか?また、どんな仕事をされていますか?
 知的財産権問題や労務問題、債権回収等の企業法務を中心に、相続や離婚といった家事事件から交通事故、不動産トラブル等一般民事事件を幅広く取り扱っています。
 対応業務の内容が多岐にわたることから、日々勉強の毎日です。ただ、その分、一つ一つの生の事件に向き合うことの面白さは計り知れません。依頼者の方が何を望んでいらっしゃるのかをヒアリングを通して汲み取り、そのゴールに向けて何を検討しなければならないのか考える必要があります。一つとして全く同じ事案はないため、まずは事実の把握が重要で、資料とにらめっこして1日が過ぎることもよくあります。書面を作成するとき、相手方と交渉するとき、私が使う言葉の一つで結果に影響することもあるので、依頼者の方の利益が最大になるように常に頭を働かせます。この地道な作業が実を結んだときの充実感や依頼者の方に満足していただけたときの表情が何よりの弁護士のやりがいではないかと感じています。
◆ 鹿児島県ご出身で阪大ロー進学に伴い初めてひとり暮らしを経験したと伺っていますが、そのときの不安な気持ちやどう乗り越えたのかなどを聞かせてください。
 大学院に進学した当初は、慣れない一人暮らしと講義の予習で手一杯になり、鹿児島に戻りたいさみしさや講義についていけないのではないかとの不安と闘う日々でした。ですが、同期入学の友人が勉強に関してアドバイスをくれたり、気分転換に付き合ってくれたりしたおかげで、徐々にロースクール生活に慣れることができました。また、大阪大学ロースクールには、コンタクトティーチャーという制度があります。学生一人ひとりに担当の先生が付き、定期的に面談を実施するものです。私は、コンタクトティーチャーの先生に当時の不安や悩みをよく相談していました。時間を取って親身に話を聞いてくださり、時には厳しい言葉で励ましていただいたことで、「ひとまず今期を乗り越えよう」から「次は苦手教科の成績を上げよう」と、少しずつ前向きに司法試験に向けて取り組むことができるようになりました。周囲の友人や先生方のサポートがあって当初のさみしさや不安を乗り越えられたので、今でもとても感謝しています。
◆ 司法試験の体験談について(どんな工夫をして勉強したか、苦心した点やエピソードなど)を教えてください。
 私は、1回目の司法試験は不合格となり、2回目で合格しました。はじめは、ロースクールの予習課題や過去問で問われていることを基本書や裁判例の検討を通して考えるという勉強方法を採っていました。今思えば、目先の問題に気を取られた勉強になっていたと思います。しかし、それでは体系的な理解が不足しているため、なかなか記憶が定着せず、事案の小さな違いや応用に対応すること難しかったため、問題によって出来不出来が大きく異なるようになりました。その弱点に気が付かずに1回目の試験を迎えたため、案の定試験科目ごとに成績が大きく異なり、合格には至りませんでした。
 時間はかかりましたが、合格発表後に勉強方法を見直し、まずは一から基本書を読み直し、それと同時に後から見直すことができるように重要部分をまとめたメモの作成に取り掛かりました。分からない部分があればその都度友人に質問し、疑問点を残したまま進めないように意識しました。そうすることで内容が流れで頭に入るようになり、基礎固めができたように思います。問題にある多くの事実の中から何が重要なのか、複数の論点が絡み合う場合にどう応用すればいいのか、限られた試験時間の中で検討する地盤づくりのために、焦らずに体系的な理解を深めることが必要だったのだと思います。
 それと、もう一つ、メリハリが重要だと感じました。法曹を目指してから司法試験合格までは早い人でも数年はかかります。目標に至るまでの期間が長いと、どうしても中だるみが生じてしまったり、まだ時間があるとどこかで余裕がある気になって終盤で詰め込み学習になってしまったり、思うように進められないことが多いのではないでしょうか。私もその一人でしたが、短期の目標を立て、息抜きを取り入れたメリハリのある生活リズムを整えることが長い道のりを進んでいくコツではないかと思います。
◆ ドラマの法律監修に携わっておられますが、特徴ある仕事だと思いますので、その魅力について教えてください。
 私の所属する法律事務所の特徴の1つとして、メディア関係法務を全国レベルで業務させていただいていることが挙げられます。さらにその中にドラマの法律監修の仕事があります。普段の業務は、何らかの問題点がそこに存在し、依頼者の方が望む結果となるように事実を整理して主張を構成したり、相手方の温度感を探りながら方針を模索したりするため、過去を見つめて将来予測をするというイメージがあります。事実は既に存在しているので、それをいかに組み合わせて法に沿った説得力のある主張ができるか、を考える作業です。
 一方、法律監修の仕事は、ストーリーの中にある法的問題点の有無を検討し、発見された場合はストーリーの中の事実をどう工夫していくか、といった未来を作る作業のような感覚があります。ストーリーの構成段階から携わらせていただくこともあり、その場合はこのような結末にしたいがそのためにどのような事実を散りばめたらいいのか、と相談を受けることもあります。このように普段の業務とは違う思考の順序になるので、その点でまた違った面白さがあります。
 また、業務として真剣に内容の確認やストーリーの検討をする一方、純粋にドラマとしての楽しみもあります。一視聴者としてドラマを楽しみながら、提案した内容や確認をした部分がどのように映像化されるのだろうかとわくわくできるのも他の業務では味わえない特別な魅力ではないかと思います。
◆ 今の仕事に LSでの学びがどう活かされていますか?
 ロースクールでは基本書や裁判例の検討をしながら問題と向き合う力を付けるものと思います。このときに身に付けた基礎的な知識は、当然ながら実務でも役立ちます。相談を受けて何が問題になるのか、その見当が付かないことには解決には至りません。このときに役立つのが知識や経験です。
 また、実務に出ればこれまで検討したことのない問題や法律に突き当たることは多々あります。このとき、言うまでもなく重要なのはリサーチ力です。ロースクール時代に問題になる部分とそれに対する裁判所の判断や考え方を基本書・裁判例で調べるようにしていた習慣は今でも役に立っています。
 さらに、ロースクールでは大学時代と比べて友人らと議論する機会が多くありました。同じ問題を読んでも考え方はそれぞれで、一つの事情をとってもそのような観点から評価できるのか、と数えきれないほどの発見がありました。弁護士はいずれの当事者の代理人になるかで主張内容が異なります。その際、相手方がどのように考えるかを踏まえた充実した検討ができるようになるためにも、複数の視点を持つことは重要です。このような素養を培うことができたのも活発に学生同士で議論できるロースクールの環境のおかげだと思います。
◆ 後輩へのメッセージをお願いします。
 私は、大変ありがたいことに依頼者の方や事務所のメンバー・同期に恵まれ、これまで楽しく充実した弁護士生活を送ることができています。大学時代に出会った弁護士の先生に憧れて法曹の世界を目指すようになりましたが、生まれ変わってもなりたいと思えるほどやりがいのある魅力的な仕事だと感じています。決まった答えのない、能力と努力で自身の可能性を最大限に発揮できる業界なので、法曹を目指したきっかけは人それぞれだと思いますが、興味を持ったその感覚を信じて、司法試験合格を目指して努力を重ねてほしいなと思います。皆様のご活躍を心より祈念いたします。
▲ PAGE TOP