松本 和彦 教授
皆さんが法科大学院に進学(しようと)する動機は法曹になること、直接的には、司法試験に合格して法曹資格を得ること、にあると思います。しかし、なぜ法曹になりたいのかと問われたら、世の中の弱者を助けたい、人から尊敬される職に就きたい、経済的に恵まれた生活を送りたい、両親の期待に応えたい等の様々な答えが返ってくるのではないかと想像します。法曹を目指す理由は人それぞれであり、多少利己的なものであっても必ずしも咎められません。
ただ志望理由がどうあれ、法曹になれば職業上必ず求められることがあります。それは公共に尽くすことです。法曹は自分のためではなく、他人のために仕事をしなければなりません。他人の相談に乗り、他人に助言し、他人の紛争を解決することが仕事になります。法律の知識や弁論・文書作成の技能も他人の役に立たなければ無意味です。皆さんにも、法曹への道が公共への奉仕につながっていることを理解して、法科大学院で学んでいただきたいと願っています。
松井 和彦 教授
私の大学院時代の師匠は、「心はホットに、頭はクールに」ということをよく言われました。社会正義を実現するには、熱く燃えるような正義感と、困っている人や社会的弱者に寄り添う温かい心が重要であるが、問題の法的解決を実現するには精緻な法律論を組み立てる冷静な論理的思考が必要であって、その両方が不可欠なのだ、という意味です。感情だけでも論理だけでも上手くいかない、というわけです。
「ホットな心」をもつには、社会への関心と問題意識が大切です。いま社会で何が起こっていて、何が問題となっているのか、これからどのような問題が起こりそうなのかをキャッチするアンテナをもちましょう。「クールな頭」をもつには、論理的な思考を身につけること、物事を多角的かつ大局的に見ることが重要です。もちろん、法律論を組み立てるのですから、法律学に関する学識も必要です。志を同じくする仲間と切磋琢磨しながら、ホットな心とクールな頭をもった法曹を目指しましょう。