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研究科長室より

法律問題と料理

2019/05/07

 法律家に求められるのは、与えられた問題に対して適切な法的解決方法を示し、それを実践することです。

(私の趣味でもあるので)料理をたとえにして示してみます。料理は、食材を調理することで出来あがります。法律問題を含む事実が「食材」です。法律家に求められるのは、その食材を調理して食べられる状態の料理にすること、すなわち事実に対する適切な解決方法を示すことです。食材はほとんどの場合、そのままでは食べられません。道具を用いて調理し、そして味を調えて料理にするのです。道具と調味料に当たるのが法的知識とバランス感覚です。

 まず下ごしらえとしては、食材を包丁で切るなどして調理できるようにします。包丁は、ただ持っているだけでは使えません。包丁がよく切れる状態に研がれていることが必要です。また、食材の状態をわかったうえで、その食材に対して包丁をどう入れるのか、つまりその使い方を知っていなければなりません。この段階を法律問題に当てはめれば、与えられた事実に適用すべき条文やその解釈としての法理をまず身につけなければならないということです。未修の諸君にとっては、これが最初のステップ(基礎科目)になります。

 次は調理です。食材に応じて、どのような調理をするかを決めて、それを実際に行わなければなりません。これが事実を法理に当てはめることに当たります。この段階で失敗すると生煮えになったり、焦げ付いたりするわけですから、経験と身につけた技術を適切に用いることが必要です。法科大学院の2年次以降ではここを磨くわけです。

 最後は仕上げです。料理では調味や盛り付けです。ここではバランス感覚が重要です。料理なら、美味しく、きれいに、がポイントです。見た目がきれいでも、味が不味いとか、味はいいが盛り付けが整っていないというのでは、いい料理とはいえません。法律問題でも、説明の論理自体には問題がなくても結論がおかしい、というのでは台無しです。たとえば答案を書くときには、答案構成の段階で事実の適示からそれに適用すべき法理の提示、事実への当てはめという流れを意識し、そのうえで結論が妥当なものか、をあらかじめ考えておいてほしいと思います。

 法科大学院の2年、あるいは3年間は(あるいはその後も)一流のシェフ(法律家)になるための修業時代と心得てください。皆さんの成長を楽しみにしています。

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