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研究科長室より

青雲会総会に参加しました

2020/12/02

 1128日(土)に青雲会(大阪大学法学部同窓会)の総会がありました。

 私も法学部の卒業生(1984年卒業で、卒業期は32期になります)ですし、高等司法研究科長として招待もされていましたので、参加してきました。この総会は、本来7月に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて延期となっていたものです。

 第1部の総会の方は、2019年度の活動報告と決算、2020年度の活動方針と予算の承認といった型通りのものでしたが、第2部の講演会が大変興味深いものだったので、紹介しておきます。講師は、日立造船(株)相談役の古川実氏(阪大経済学部の卒業で、経済学部の同窓会会長もされていたそうです)。演題は「陸(おか)に上がった日立造船」*というものでした。
*同名のビジネス書があります(岡田晴彦著『陸に上がった日立造船』2013年ダイヤモンド社)。

 日立造船が阪大の工学研究科と「Hitz協働研究所」という共同研究の取組を行っていることは、以前から知ってはいました。もっともこれは、智適塾の活動報告の中で、この協働研究所に関する案件について側聞していたからこそで、法科大学院の一教員として過ごしているだけでは知り得ないことでした。しかも、私の認識は、これまでは、造船会社が経営の多角化のためにバイオ産業に手を広げている、という程度のものに過ぎませんでした。古川氏の講演を聴いていると、この会社の変化は、そんな生易しいものではありませんでした。演題が「陸に上がった」となっているのは、日立造船が現在、造船事業からは、資本面も含めて全く手を引いていることを前提にしたものでした。造船業界が韓国や中国との競争に勝てなくなり、合併と統合による生き残りを迫られる中で、日立造船という会社は、社名には「造船」の名を残しているものの、造船業界から完全撤退していたのです。環境事業を中心とする会社へと姿を変え、「陸に上がった」日立造船は、当初は造船技術の派生事業として大型プラント製造を手掛け、それがごみ発電(Energy from Wasteの略でEfWというのだそうです)などの開発につながっていった、というのです。この会社の変化についてのストーリーは、ダイナミックで聴きごたえがありました。環境事業へのシフト、そしてそれをさらに発展させていこうとする方向性が、この欄で先月取り上げたSDGsを強く意識したものだったことも印象的でした。

 ポスト・コロナの社会では、事業の方向転換を図ることで、コロナ禍による事業存続の危機を生き残ろうとする企業の模索が続くでしょう。高等司法研究科は、養成する法曹像の一つに、商都大阪を支える「ビジネスロイヤーの育成」を掲げています。これは単に「お金儲け」を目指すということではありません。困難な時代にあっても、持続可能で活気溢れる企業活動を支える法曹になってほしい。そう願っているのです。


秋の楽しみの一つ。干し柿作りをしました。

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