2023/10/30
以前、この欄でお金の話をしました。今回もお金の話です。といっても、あれやこれやのお金の話を始めると収拾がつかなくなるため、一つに絞ります。今回、話題にするのは、表題にも掲げた修学支援事業基金の話です。修学支援事業基金とは、経済的理由で学費の支払いに困難を来した本研究科の学生に対し、本研究科が返還不要の給付型奨学金を支給するものです。つまり、経済的に苦しい本研究科の在学生に、返さなくてもよいお金を支給するという仕組みを意味します。
学生生活には何かとお金がかかります。学費や通学費はもちろん、書籍や学用品の購入にもお金がかかります。食費や衣料費など、必要不可欠なものだけでも結構な金額です。学生生活を送るためには、何とかしてその費用を捻出しなければなりません。現在、学生生活を送っている在学生の皆さんは、それぞれの仕方で必要な費用を賄っていることと思います。しかし、中にはギリギリのところで踏ん張っている人もいて、そのうちの何人かが、毎年、修学そのものの断念に至っています。志半ばでの無念さを思うと、残念の極みと言わざるを得ません。
そこでそうした無念さを少しでもなくすため、本研究科は、大阪大学未来基金の中に特定基金として修学支援事業基金を設けました。この基金から、毎年1名に限り、年間30万円の給付型奨学金を在学生に支給しています。年間1名という数の少なさや年間30万円という額の小ささから、この基金の非力さを感じ取られたかもしれませんが、このようなささやかな給付であっても、それを必要とする在学生が毎年一定数いて、やむにやまれない事情から応募に至っているものと思われます。応募の実情に鑑みると、本来であれば、応募者全員に奨学金を支給したいのですが、基金の側にそれだけの余裕がないのが本当のところです。
修学支援事業基金の原資は寄付金です。そのため世の中に広く訴えて寄付を募っています。しかし、実際に寄付してくれるのは本研究科に思い入れのある人に限られます。基金の立上げ時点では、阪大法学部出身のOB等が大口の寄付をしてくれました。現在でもそのときのお金が基金を支えています。しかし寄付が続かなければ、いずれ枯渇するのは目に見えています。残念ながら、その後、大口の寄付は途絶えてしまいました。毎年30万円の支給を続けるためには、少なくともそれを上回る入金が必要です。また、基金に定期的な入金がなければ、基金維持の費用の方が大きくなりかねないことから、基金を廃止するとの大学の方針もあります。基金が廃止されると困るので、本研究科の歴代研究科長は、修学支援事業基金への支援を世の中に訴えるとともに、自ら身銭を切って基金の維持に努めてきました。ただ、このようなやり方にはもちろん限界があります。
修学支援事業基金の維持のためには、本研究科の修了生の皆さんの助けがどうしても必要です。本研究科には1,300人近くの修了生がいます。その人たちがほんの少額でよいので、基金に寄付してくれたら年間30万円の奨学金の支給など造作もないことです。1人5千円や1万円でも、年間複数人に奨学金を支給できそうです。現在は複数の応募者の中からあえて1名を選び出して、その人にだけ奨学金を支給しています。この選別作業も心苦しいのですが、このままだとその継続すら難しくなるという悲観的な推測もあります。
ただ、最近、少しずつですが、修了生の中からポツポツと修学支援事業基金に寄付してくれる人が現れ始めました。この傾向には大変心強い思いがします。大学への寄付というと、敷居が高くて踏み切れないという遠慮や、何に使われるか分からないから怖いという猜疑に阻まれ、これまで実行に移してくれる人がなかなか現れなかったからです。しかし、修学支援事業基金は上記のように使途が決まっていますし、寄付の方法も想像以上に簡単だということが、少しずつですが、広まってきたのかもしれません。もし本研究科の修学支援事業基金に関心をもってもらえたのであれば、下記のURLをご覧いただけると幸いです。
https://www.miraikikin.osaka-u.ac.jp/project/learning-lawschool