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研究科長室より

2023年の司法試験結果を考える

2023/11/13

 これまで5月に実施されていた司法試験が、今年から7月に行われるようになったということは、既にお話ししました。それに伴い、合格発表の方も2ヶ月先送りされています。これからは11月が合格発表の月になります。今年は11月8日(水)でした。例年同様、今回も法務省からのデータを受け取り、教務係において合格者名簿を作成するとともに、データに基づく結果分析を行いました。その概要は研究科ウェブサイトの別欄にアップロードされています。
令和5年の司法試験の結果について
ここでは研究科としての結果分析を超えて、研究科長としての幾分個人的な思いも盛り込んだ見解を提示いたします。

 その前提として、まず、本研究科の今年の司法試験結果を示しておきます。今回の受験者は182人(昨年111人)で、合格率は42.86%(昨年45.95%)でした。本研究科の当面の目標は合格率50%以上でしたが、そこには到達しませんでした。むしろ3%ほど合格率が下がってしまいました。昨年の合格率を上回ることができれば、上記目標を達成できるのではないかと推測していたのですが、合格率が上昇した年の翌年は下がるという、いわゆる隔年現象のジンクスを今年も破ることができませんでした。

 今年から導入された在学中受験の制度が、本研究科の司法試験の結果にどのような影響を及ぼすのかという点にも注目していました。本研究科の3年次生で、在学中受験をした人の数は53人です。これは3年次生の約3分の2に相当します。合格した人は27人で、合格率は50.94%でした。こちらの合格率は50%を少し超えました。全国的に見ると、在学中受験者は1,070人で、合格者数は637人、合格率は59.53%ですから、初回の在学中受験者の結果は、全国的に良好だったといえます。ただし、在学中受験者の合格率は法科大学院による違いが大きく、一橋大学の83.33%を筆頭に、いわゆる上位校が高い合格率を示しているのに対し、合格者をほとんど輩出していないところも少なくありません。元々、在学中受験を推奨していたところもあれば、慎重姿勢のところもあって、スタンスも様々でした。今回の結果が在学中受験を標準化させるきっかけになるかもしれません。

 本研究科では以前から、修了1年目の修了生(いわゆる直近修了生)の合格率の高さが目立っていました。ここ数年、直近修了生の合格率はずっと上昇していましたが、今年3月に修了した直近修了生の合格率は60%を超えました。在学中受験の合格者は翌年受験しない(する必要がない)ので、来年以降の直近修了生の受験者数は減少すると思われるものの、直近修了生の合格率は高い水準を保ってくれるのではないかと期待されます。やはり法科大学院で相当期間学び、勢いをもったまま試験に臨むことのできる直近修了生は、受験に有利な状況下にあるのかもしれません。他方、修了2年目以降の修了生にはモチベーションの維持など、受験に向けた立て直しが求められるところです。

 来年以降の直近修了生の中には、前年の在学中受験を不首尾で終えた人も加わってきます。直近修了生でありながら、2度目の受験になるという人です。現時点では在学中の3年次生でもあるので、在学生として、授業その他のカリキュラムの中で受け止められることになるでしょう。私は、受験に失敗したときの精神的ダメージのことを心配していたのですが、先日、在学中受験の結果が思わしくなかった某在学生に、大丈夫ですかと声をかけたところ、「次はギリギリでの合格を狙うのではなくて、上位の成績で合格できるように頑張る」との笑顔の回答が返ってきて、逆に勇気づけられました。こちらが思う以上に、学生の皆さんは気持ちをしっかりと持っているのだと感心しました。もちろん、色々な人がいるはずなので、研究科としても相手に応じた対応を心がけたいと思っています。

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